小鳥の囀りが優しく耳を擽る。カーテンの隙間から注す朝日が眩しく、寝返りをうって背中を向けた。一人では広すぎるキングサイズベットの柔らかい布団に沈む。あぁ、幸せ。

しかし、至福の時はあっけなく崩れ去った。

「おはようございますお嬢様!!」

「のぶしゅ!!」

シーツを剥ぎ取られ無防備だった身体は床に落下した。顔面からいったので鼻を強打し、痛みにのたうちまわる。朝一発目からこの仕打ちは酷すぎないか。というか、ヘビーすぎるよ。

「幸村ァ!!!」

「お目覚め如何でございますか?」

「あんたのせいで最悪!!」

なんとか回復し、寝具にはい上がって怒鳴りつければ、それはお可哀相に…なんてたいしてそうは思っていない口ぶりで宣う。だからあんたのせいなんだって。自覚あるの?何処の世界にお嬢様を落として起こす執事がいるんだ。

「もっと優しく出来ないの!?」

「お嬢様は普通に起こしても起きてはくださらぬ故、致し方ありませぬ」

私のためにって感じだがただ単に本人が楽しんでるだけだ。

専属の執事である真田幸村は周囲には熱血漢の純情青年で通っているが私の前では全く違う。とにかく意地悪で徹底的に虐めてくる。ようは腹黒いのだ。可愛いと騒いでいるメイドさん達に本性を教えてやりたい。

このっ………二重人格黒ワンコめ!!仮にも私は主人だぞ!!もう少し丁寧に扱ってください!!あれ、お願いになってる!?

口に出さずに悪態(?)をついていると、幸村が目の前に仁王立ち。私は座っているので見上げる形になる。彼は身長が高いので凄く威圧感があり、逆光のせいで陰が出来ているから正直恐い。肩を掴まれているので逃げるに逃げられない。

え、何、もしかしての心の声が聞こえた?エスパーか?!地味な嫌がらせしてくんな!!

「幸村、見下ろさないで!!」

「はて。何の事やら某にはさっぱり」

「幸村ァァァ!!」

その状態を維持して約5分。幸村がドア付近まで離れてようやく解放された頃には精神的に疲れていた。一日の始まりだというのに、すでに疲労困憊。もう一眠りでもしたいところだが今から学校だ。こんなくだらない理由で遅れるわけにはいかない。

幸村に出ていくように言ってからパジャマに手をかけた。が、さっきの精神的いじめのショックからかボタンが外せない。

「いかがなされました?」

「なんかボタンが…て、まだいたの?!」

私のツッコミなど綺麗に無視し、幸村がニッコリと笑った。普通の女の子だったら蕩けそうなほどの甘さを含んでいるが私は知っている。こういう表情をする時の幸村はろくな事を考えてない。

「仕方がありませぬな。某が助太刀いたしましょう」

「はぁ?」

顔を上げればやたら近い位置に幸村がいた。何事だと思う間もなく自然な動作で私の両手首を掠うと後ろに押した。ボスン、とベットに倒れ不敵に笑う幸村と見慣れた天井が映る。茫然自失になってる私の腕を頭上で一纏めにした。そこまできてようやく我に返る。

「な………何してんじゃァァァァァ!!!」

「ご安心を。無体なことはしませぬ」

「もうしてるじゃん!!」

上半身捻って逃げ出そうと試みるが上手い具合に押さえられてる。足も体重をかけられ動けない。私は両手でも無理だったのに幸村は片手でやすやすとボタンを外す。襟元が開いたことによって空気に晒された肌がヒヤリと冷えた。肩が強張る。嫁入り前の娘に何してんのおいィィィ!!!

「ちょ、幸村、やめなさい!めっ!!」

「俺は犬ではございませぬ」

制止は一蹴された。まるで見せ付けるようにゆっくりと暴かれてく。血液が高速で巡る。熱い、とにかく熱い。いったい私の身体はどうしてしまったんだ!!

「いやだって、幸村!!ぃやァ!!意地悪しないで!!」

「何を言われますか。俺はお嬢様を可愛がってるんですよ」

甘い囁きに脳髄が蕩けそうだ。いとも簡単に二つ目、続いて三つ目、と………これ以上は本当にヤバイ。寝る時は苦しいので、その…ぶ、ブラは着けてない。豊満とは言い難いがそれでも一応谷間はあってそれがもう見えかけてる。

「お嬢様の肌は雪のように白くてお綺麗でございまする」

「ひぅっ!!」

へ………変な声が出たァァァァァ!!!

ついに羞恥は限界を超えた死ぬ気で暴れると運の良い事に片足が抜けて自由になった。膝蹴りを幸村の脇腹に放ったが、やつは危険を察知して身を引いたので空振ってしまった。

「逃げるな!!!」

「おや。続きをご所望ですか?なれば遠慮なく」

「そうじゃない!!阿保!馬鹿!変態!おじいちゃんに言い付けてやる!!!」

「お嬢様、胸が見えておりますぞ」

「にぎゃァァァァァ!!!」

頭から布団を被って団子虫みたいになる。焦りまくる私を見て幸村はくつくつと喉の奥から笑いを零す。布団から顔を出しても、もう何も言えずに口をぱくぱくしていると不意に獲物を狙う獣のような目になった。引き上げた唇に舌を這わせる姿が蠱惑的だ。



「今日はここまでにしときますが、次はお嬢様を頂きまする故、ご覚悟を」




執事の皮を被った狼に食べられるのは時間の問題のようだ。





執事じゃなくて
(おじいちゃん。孫の操のピンチです)










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相互記念に次回予告の小野寺様に捧げます。えーっと………どこから謝ればいいのやら(オマエ)リクはほのぼの甘だったはずが何故かギャグ微エロになってしまいました。おかしいな、幸村はもっと優しかったはずなのに黒くなったぞ。そしてこれ書くのにどんだけかかってるの?と、言われますともう………いくら私生活が忙しかったからってってこれは酷い。おそらく小野寺様も忘れていらっしゃると思います。

小野寺様。こんなものでよかったらどうぞお納めください。本当、リクに添えてない上に遅くなってしまって申し訳ございませんでした!!書き直し、その他何かありましたら何なりと申しつけてください。

そしてここまでお読みくださったお嬢様方もありがとうございました!!個人的には黒幸書けて楽しかったです!!(爆)





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