※マフィアパロ。
※お付き松川×ボスの娘。
※いきなり始まりいきなり終わる。
※続く、かも。
この身体に流れるマフィアの血が疎ましくて仕方ない。ボスの子として生まれてきたけど、血腥いことは嫌いだ。抗争だ暗殺だという言葉には耳を塞ぎたくなる。豪華な食事や可愛い服も、お金の出所を考えると嫌悪しか感じない。私は私を取り巻く全てがいやだった。マフィアの娘のくせに馴染めない私を見る周りの目だって冷ややかだ。生まれてくる場所を間違えたと強く思う。ごく普通の、平和な生活を送りたい。私が私でいられる場所に行きたい。だからボスの娘という立場を捨てることにした。
「どこ行くんですか?お嬢」
皆が寝静まった頃、最小限の荷物を持って庭を突っ切っていたら松川に見つかって心臓が止まりかけた。松川はバラの生け垣の傍らに佇んでいる。霞んだ月の光を浴びて輪郭が浮き上がり幽霊みたいだ。
松川は私のお付きだ。ファミリーの中では比較的穏やかだけど、何を考えてるかわからなくて苦手だ。
「こんな時間に1人で出かけるなんて感心しませんね」
「松川…お願い見逃して。私の近くにいたお前ならわかるでしょ?私は臆病な人間よ。他の兄弟と違ってこの世界で生きてくなんて無理よ」
「わかりました」
「え?」
案外あっさり引いて拍子抜けする。しかしこれで終わるわけがない。
「屋敷に籠りっきりというのも辛いでしょう。見聞を広げるのも大事なことです」
「松川…?」
「ただ、あなたも由緒あるファミリーの血を引くお方。いつまでも好き勝手はさせられません。時が来たら俺がお迎えにあがります」
松川は私の話し聞いていたのだろうか。私はここに戻るつもりはないけど、松川は私を自由にするつもりがない。無意識のうちに足を引いた。十分な距離をとっているのにそれでも足りない。既に絡めとられているような、そんな気さえする。弧を描く唇、細まった瞳は底が見えない。
「いってらっしゃいお嬢」
松川からこの世界から逃げるために走った。
「あらら。行っちゃった」
「花巻いたの」
「気づいてたくせに白々しい。行かせていいわけ?ボスに殺されるぞ」
「ボスの許可はとってあるし見張りもつける。最終的には迎えにいくから問題ない。滅多に我が儘をいわないお嬢の可愛い我が儘だ。叶えて差し上げたいだろ?」
「ふーん…で、期限は?」
「1年」
「そう…」
1年といったら新しい生活にも慣れて楽しく過ごしている頃だろう。そんな時に引き戻すなんて酷いことをする。可哀想に。彼女はどこへ行っても逃げられない運命だ。
「楽しんでくださいね。お嬢様」
お嬢が消えていった闇を見つめる松川の瞳は愉しげに歪んでいた。
みつ蜂の毒
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まっつんがなんで執着してるのか、とか、迎えにいくシーンも書きたいです。
お題、isより
「みつ蜂の毒」使用