「おっす金田一」

「お、国見。終わんの早くねぇ?」

「それはお前もだろう」

やけに早くホームルームが終わって、さっさと準備を終えて部室へ向かっていると、国見と遭遇した。目的地は同じなので自然と並んで歩く。

「あ、職員室行かなきゃ」

「呼び出しか?」

「そう。ついでに鍵取ってくるから金田一先行ってなよ」

「わかった。鍵よろしく」

国見は左に曲がり俺は校舎を出た。道すがらもほとんど人を見かけることはなく、部室棟も静まり返っている。バレー部の部室に着いたが俺が一番のりみたいだ。他のクラスやつらはまだかな。携帯を取りだし、時間を確認した時だ。かたっ、と部室から物音がした。誰かいんのか?ノブを捻って押すと鍵はかかってない。ドアを開けると多少雑多としているが、それなりに片付けられてる室内に副部長とマネージャーの先輩がいた。壁に寄りかかって座る苗字先輩と床に敷いたタオルの上に横たわる岩泉さん。岩泉さんの頭は先輩の腿に乗って所謂、膝枕というやつをしている。岩泉さんの髪を撫でる苗字先輩は表情は慈しむように優しく、岩泉さんはあどけない寝顔だ。固まっていると苗字先輩と目があう。先輩は一瞬驚いた後、しっ、と唇に人差し指をあてた。まるで悪戯の途中で見つかって内緒にしててね、とでも言うような顔だ。俺は何度も首を縦に振ってから外へ引き返した。

岩泉さんと苗字先輩が付き合っているのは周知の事実だが、あの二人がいちゃついてるのは見たことない。部活内の士気を下げないためにもけじめはつける、と真面目な二人らしい理由だった。先輩たちが恋人らしい雰囲気を醸し出し、恋人らしい行為をしているのを目の当たりにしたらどきどきした。俺、彼女いねぇからわかんないけど、岩泉さんと苗字先輩の二人だけの空間は特別というか、兎に角他者が踏み込んではいけない何かがある気がする。

「金田一、部室開いてるらしいから入りなよ」

「い、今は駄目だ」

「は?なんで」

「なんでも!!」











どのクラスよりも早くホームルームが終わり、一が眠そうだったから部室で休ませていたら金田一に見られてしまった。この時間ならまだ誰も来ないと踏んでたんだけど、誤算だった。

「一、そろそろ起きて」

「んぁ…」

「おはよう」

「おー…」

一に声をかけると目を覚まして起き上がったけど、まだ意識がはっきりしてないようで、ぼーとしている。

「そろそろ皆来るよ」

「おー…」

「ほら、しゃんとして」

「おー…」

返事はしても寝ぼけたままだ。それどころか今にも眠ってしまいそう。軽く身体を揺さぶると傾いてきたので受け止めれば背中に腕が回った。目を瞑ったまま私の胸元に顔を埋めて唸る一がむずがる子供のようで可愛い。

「寝足りない?」

「ん、眠みぃ。あと…」

「あと?」

「もっと名前とこうしてたい」

それは…私もそうだけど。甘える一に負けて起こすのをやめるとすやすやと寝息をたて始めた。壁にかけられた時計を見ればまだ多少の余裕はある。金田一が外にいるけど、あの子はいい子だから誰か来ても止めてくれるはず。金田一ごめんね。もう少しだけ許してね。





どうしても起きたくなかった、お前が俺を甘やかすから










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元はツイッターで流したネタです。お相手が違う。ツイッターでは大地さんお相手です。大地さんと岩ちゃんどちらで書こうと悩んだ結果、ツイッターは大地さんで、サイト用は岩ちゃんで上げようとなりました。欲張り(笑)



お題、誰そ彼様より
「どうしても起きたくなかったの、貴方が私を甘やかすから」使用





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