「ナマエ、甘いものは好きか?」

「好きだよ」

「ならこれをやろう」

ライナーが持っている物を軽く振るとカラコロと軽快な音が鳴った。中身はカラフルな包み紙にくるまれた飴玉で、瓶の半分程を埋めている。

「飴玉なんて貴重品じゃない。貰ってもいいの?」

「俺がナマエにやりたかったからいいんだ」

にっこり笑うライナーの、思わせ振りな言葉に期待しそうになる。特別に可愛がられているという自負はあるけど勘違いしてはいけない。ライナーにとって私は可愛い妹分なのだから。

「ありがとうライナー」

「待った」

受け取ろうと手を伸ばしたが、ライナーが腕を上げて取れないようにしてしまった。

「え?くれるんじゃないの?」

「一つ約束事がある。それを守れるならこれをやろう」

「何?」

「1日1つ、必ず食べるんだ。勿体ないからって取っといたらダメだぞ。俺はお前に食べてほしくてやるんだからな」

「えぇー」

甘いものは滅多に食べられないし、飴玉なら日持ちするから暫く取っとこうと思ったのに。でも、約束しないとくれなそうだしな…。すごく食べたい。

悩んだ末に承諾の返事をすればライナーは飴玉をくれた。早速一ついただこう。コルクの蓋を開けて取り出す。包みを開くと黄色の飴玉が出た。口の中に放り込み、舌を使って転がすと甘味が広がっていく。飴玉なんて久しぶりに食べるなぁ。夢中になって舐めているのをライナーはじっーと見てくる。

「どうしたの?」

「いや、何でもない。必ず食べるんだぞ。いいな」

「わかった」

それから1日1つ。ライナーとの約束を守って飴玉を舐めている。ライナーは朝一で会う度に飴玉はうまかったか?と、訊いてくるのでおいしかったよ、と返している。このやりとりが毎朝の恒例行事になった。ただ、その時のライナーは残念そうな、気落ちしたような様子に見えるのだけど、気のせいかな。

日に日に減っていく飴玉はついに残り1つになった。勿体ないと思うけど、約束は約束だ。破ってしまってはライナーに申し訳ない。最後の1つはいつも以上に味わいながら食べよう。瓶を逆さにして掌に落として包みを開く。出てきたのは見慣れた黄色の飴玉。それはいいのだけど、

「ん?」

包みになにか書いてある。皺を伸ばしてきっちり3秒。見つめた後、天を仰いでからもう一度確認するが見間違えなんかじゃなくて混乱する。小さな包み紙に大きく『好きだ』と書いてある。何が?飴玉が??

人の気配を感じて顔を上げると苦笑するライナーがいた。

「ライナー!?」

「まさか最後にそれを引き当てるとはな」

「これって何?ライナーが書いたの?」

「ああ、俺が書いた。そのままとらえてくれればいい」

そのままって…どのまま?だってずっと意識されてないと、私ばかりがライナーを好きなんだと思っていたのに。信じられない。頬が熱くなって心臓がドキドキしている。これは勘違いなんかじゃないはず。期待してもいいよね?

「そ、それじゃ素直に受け取って返事をしたいと思います」

「ちょっと待った」

「へ!?」

「こんなまどろっこしいことをしといてあれだが、やっぱり直接伝えたいんだ。聞いてくれ」

ライナーは何度か咳払いをすると、真っ直ぐに私を見て、言った。



「ナマエが好きだ」



ライナーがくれた飴玉の瓶と包み紙、そして彼の想いは私の一生の宝物になるだろう。





瓶につめこまれたこころについて









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企画サイト、きせき様に提出しました。

最初はジャンで書こうとしてたんですが、ライナーでも行けるんじゃねェ?と思い急遽変更しました。が、別にどっちでもいいような気がします。





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