吐き出した息が凍りついてしまうのではないかと思えるぐらい寒い。隣を窺うと同じように空を見ているナマエの鼻や頬っぺたが、カンテラの僅かな灯りでもわかるぐらい赤くなっていた。しかし、彼女は寒さも気にならないぐらい星空に夢中なようで瞳がキラキラしている。まるで星の輝きが彼女の瞳に移ったみたいだ。

星を見ようよ、と誘われてカンテラ一つ持って外へ出た。晴れているおかげで空気が澄んでよく見えるが、それにしたって寒い。冷たくなった手を擦る。ナマエが空ではなく僕を見上げた。

「ベルトルト寒い?」

「うん。ちょっと」

「なら、いいものあげるから屈んで」

「いいもの?」

「そう。いいものよ」

ウィンクするナマエに期待して腰を折り曲げて目線を合わせると、どこに隠し持っていたのか。マフラーを取り出した。暗めの青、落ち着いた色合いをしたマフラーが一巻き二巻きと首に巻かれる。それなりに長さがあり、口元を覆ってしまった。ちょっと息がしづらいけど暖かくて強張っていた顔が綻ぶ。

「暖かいね」

「ベルトルトにあげようと思ってたの」

「僕に?どうして?」

「今日はベルトルトの誕生日でしょう。だからプレゼント」

「知ってたんだ」

今日は僕の誕生日だけど教えてなかったので知っていたことにびっくりしていると、ナマエの目つきがきつくなる。

「知ってたんだ、じゃないわ!!どうして教えてくれなかったの!?」

いきなり大きい声を出すので肩が跳ねる。え、怒ったの?誕生日だって言わなかったのが不満だったらしい。僕としてはそこまで怒るようなことではないと思うのだけど、ナマエは腕を組んでぷりぷりしている。

「アニが事前に教えてくれなきゃマフラー編めなかったんだからね」

「これ手編み?」

「そうよ。1ヶ月、寝る間も惜しんで編んだから」

そういえばここ最近は眠そうにしていたな。僕のために一生懸命編んでくれたんだと思うとふわふわしてきた。なのに、ナマエはつり上げていた眦を下げてしまった。

「手作りのプレゼントは嫌?」

「まさか!!むしろ嬉しいよ」

君が作ってくれたものが嫌なわけないだろう、と伝えるとナマエは嬉しそうに笑ってくれた。ついでにお怒りも解けたようなので二重の意味で安堵する。

「本当は一番最初におめでとうって言おうかと思ってたの。でも、どうせなら一番最後に、何度でも言ってあげたいと思って。あと少ししかないけど、今日が終わるまでお祝いするわ」

それは日付が変わるまで僕と一緒にいるということで、教官に見つかったら大目玉食うし、明日も朝から訓練があるんだけど、それら全てどうでもよくなる。今大切なのは彼女と過ごすことだ。

「お誕生日おめでとう」

「ありがとう」

たったこれだけのやりとりなのに、僕を幸せにするには充分だった。同郷で元々、僕の誕生日を知っているライナーとアニはこっそり祝ってくれたけど、それ以外の人は今日が僕の誕生日ってことを知らない。祝ってもらえなくてもよかった。誕生日が特別な日だとは思えないし、むしろ好きではなかったから。でも、実際におめでとうと言ってもらえると嬉しくなる。それは僕の大好きな人達が、僕が生まれてきた日を心から祝ってくれてるからだ。

「本当におめでとうベルトルト。大好きよ」

「ありがとうナマエ。僕も大好きだ」

背中を丸めてキスを落とす。そっと離れてから、プレゼント2つも貰っちゃったね、と言うとナマエは、こんなのでよければいくらでもあげるわ、と囁くのでもう一度顔を近づけた。再び唇を重ねた僕らの頭上に浮かぶ星々が、祝福してくれるかのように瞬いている。





星が瞬く夜のこと









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ベルトルト誕生日おめでとうー!!遅れてごめんなさい。私の中のベルトルトは捻くれトルトなので危うく、誕生日が何ぼのもんじゃーい!!って感じのトルトになりそうでしたがどうにか軌道修正いたしました。良かった。





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