いつもアルメリアが俺を探すから俺があいつを探すのは初めてだが、見つけられなかったらという不安はない。

「見ーつけた」

結果的にすぐに見つかった。宿舎の近くにあるベンチに座っているのを発見した。隣に腰を下ろすとアルメリアは身体を仰け反らせる。何でそんなビビってんだよ。

「じゃ…ジャン!!なんだか久しぶりだね!!」

「お前が俺を避けてるからだろう」

墓穴を掘ったと気づいて固まっている。アホだなこいつ。

「そんなことしてないよ!!ジャンの気のせいじゃないかな〜」

「さっさと理由を話せ」

単刀直入に訊くとあからさまに狼狽えてみせた。全部吐け、と睨みをきかせると観念したようでおずおずと話しだした。

「あの…あまりジャンの傍にいたらミカサが勘違いするんじゃないかと思って私なりに気遣ってみました」

ああ、成る程。そういうことか。納得はしたが、不満が残る。アルメリアにしては考えて行動したんだろうけど、裏目に出てんだよ。

「変な気をつかってんじゃねぇよ!!」

「酷い!!せっかくジャンのことを思って行動したのに!!」

「いままで散々ひっついてたくせに何言ってんだよ。大体、俺のためなんて言ってるけど本当は自分に好きなやつが出来たから離れたんじゃねぇの?」

「す、す、す、好きな人なんていないから!!」

嫌味のつもりで言ったのに好きな、の部分に過剰に反応して顔を赤らめるので面食らった。アルメリアに好きなやつがいるなんて一度も考えたことがなかった。恋愛事になんて興味がないだろうと勝手に思い込んでいた。好きな男がいるのなら………知るかそんなもん。今まで散々俺に甘えてきたくせに、他のやつが好きだなんて納得出来るか。例えそうだとしても渡すわけない。

「悪いが俺はお前が幸せならそれでいい、とかいいやつぶるつもりはねぇよ」

「ジャン、話が見えないんだけど…」

「だから、お前が好きだっつってんだよ!!」

勢いよく立ち上がり、アルメリアに人差し指を突き付けながら告白した。告白、してしまった。自覚したのは昨日だぞ。言うつもりなんてなかったのに…なんてこった。取り敢えず行儀が悪いので指を仕舞い、再度座った。沈黙が支配して気まずい。

「う…」

「う?」

「嘘だ!!」

「はぁ!?」

今度はアルメリアが立ち上がり、俺に向かって指を突きつけた。こいつ、人の一世一代の告白を嘘呼ばわりしやがった!!

「だってだって!!ジャンはミカサのことばかり見てたじゃない!!そんなジャンをどんな思いで私が見てたかしらないくせに!!」

地面に丸まってわんわん泣き始めた。その姿がダンゴムシみたいだなんて口が裂けても言えない。というか、今気になることを言わなかったか?

「どんな思いって…どういい意味だよ」

「誰よりもジャンの近くにいるはずなのにジャンは私のことなんて見てくれなくて、視線の先はいつもミカサで悲しいし悔しいし。ミカサに嫉妬するしで、自分のことが嫌いになりそうだったから離れたのに!!」

「お前…」

今のってほぼ告白…。顔が熱くなるので誤魔化すように頭かきむしる。アルメリアがこっちを見てないのが幸いだ。両思いで万々歳なはずなのに、どうしてこんな面倒なことになってんだろう………俺のせいか。

「はぁー。お前さ、両思いなんだから喜べよ。何で泣くんだよ」

「信じられ、ないから!!」

「どうしても信じられないか?」

「ふっ、うっ、ジャンが、今の私と、同じ立場だったら、どう、思う?」

「信じられないな。でも、今、俺が好きなのはミカサじゃなくてアルメリアなんだから、これしか言えねぇよ」

気持ちは一緒なのにアルメリアが受け入れない。多分、アルメリアはミカサを見ていた俺をずっと見ていたのだろう。だからこそ、急に言われても信じられないんだ。そりゃそうだ。違う女を見ていた男から告白されたって信じられるわけない。都合のいいこと言ってるのもわかってる。でも、お前への想いは嘘じゃない。

アルメリアが傍にいないなんて堪えられないんだよ。

「本当に、私が好きなの?」

「ああ」

「ミカサじゃなくて?」

「ミカサじゃない。お前だよ」

わかってもらえるまで何度でも言おう。伝われ、そんな想いを込めてアルメリアの手を握ると顔を上げた。真っ直ぐ見つめられるので見つめ返せば視線が交わる。揺らぐ瞳には不安そうな表情をした俺が映った。

「…ジャン」

「何だよ」

「ジャン」

何かを確かめるように俺の名を呼んだ。眉は八の字になったまま、睫毛は濡れている。それでもアルメリアは泣き止んで笑った。

「ジャンが好きです」

ああ、信じてくれたのか。強張っていた肩の力が抜けるが、呆けている場合ではない。あんな勢い任せのではダメだ。もう一度、ちゃんと言わなければ男が廃る。深呼吸をして心を落ち着かせる。ちゃんと伝えないと。

「俺もアルメリアが好きだ」

そう言った瞬間、アルメリアの瞳から涙が零れた。ボロボロと、溢れでる量が尋常じゃない。本当、仕方ねぇな。おいで、と手を広げれば飛び込んできたので抱き締める。

「ゆ、ゆめ、夢じゃ、ないよね?」

「んなわけあるかバカ」

アルメリアがこの腕の中に戻ってきたことに安心し、想いが一緒だったことが嬉しくて口元が緩む。あーだらしない顔してんだろう。アルメリアが愛しくてたまらない。

「ジャン好きっ」

「俺も好きだ」




どうせお前みたいな泣き虫に付き合ってやれんのは俺ぐらいなんだから、もう二度と離れんなよ。




泣き虫と一緒
(これからもずっと)








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