マルコはまたもや衝撃的な発言をした。俺が、アルメリアを、独占したい…だと?アルメリアの気の抜けるような笑みを思い出す………半笑いでないわー、と手を振り否定するが、マルコは笑顔を崩さない。マルコの全部わかってます、みたいな態度は何はなんだろう。

「あんな面倒くさいやつ独占したいとかどんだけだ。欲しいやつがいるならくれてやるよ」

「そうか。じゃ僕が貰おうかな」

「何だって?」

「ジャンは面倒事から解放されるんだからいいじゃないか。あの明るいアルメリアが実は泣き虫なんて可愛いよ。是非とも慰めてあげたいね。だから、ジャン。僕にアルメリアをちょうだい」

ちょうだい、ってお前、アルメリアは物じゃねぇよ。自分のことは棚に上げてそんな風に思った。思考回路がぐるぐる回りだす。今日は考えることがありすぎてショート寸前だ。

マルコはいいやつだ。こいつになら預けたって何の心配もない。マルコにアルメリアを任せれば解放されるけど、それは本当に俺の望みか?不細工な泣き顔も、泣き終えた後のあのへらっとした笑みも、俺を見つけた時の安心しきった表情も、ジャンと呼ぶ声も、全てがマルコのものになる―――そんなの、認められるか。

「俺はお前を信頼している。でも、アルメリアのことは別だ。相手が誰であろうとも関係ない。泣き顔だけじゃねぇ、どんなあいつも渡したくない。いや、渡すつもりもない!!」

思ったより大きい声が出た。悠然としているマルコを、そんなつもりはなかったけど、睨みつけていた。マルコはまるで力を抜くようにふっ、と息を吐き出す。

「ジャンは気づいてないだろうけど、アルメリアといる時のジャンは優しい表情をしてるんだよ。ライナーは、兄と妹みたいなもんだろうって言ってたけど、僕はそうは思えないな。アルメリアを見るジャンの目は本当に愛おしそうで、ミカサには向けない眼差しだ。その上、彼女を誰にも渡したくないって激しい感情もある。これが恋じゃないっていうなら一体何だろうねぇ」

「………知るかよ」

どう答えればいいかわからなくて素っ気ない態度になる。マルコの野郎、謀ったな。何故かマルコには本人以上に色んなことがわかっているらしい。

「ジャンはまだ、自分の気持ちに知らんぷりするの?」

「………」

「これが最後の質問だ。ジャン。今、お前のここにいるのは誰?」

マルコが俺の胸あたりを指差す。離れていった指の代わりに自らの掌を当てる。ここにいるのは………アルメリアだ。最初こそ成り行きだったけど、自然と面倒を見るのが当たり前になっていた。アルメリアが俺の側にいないなんてありえない。なんだ、簡単じゃねぇか。

「マルコ、俺…アルメリアのことが好きみたいだ」

「ふはっ。何で他人事なんだよ」

自分のことだろう?と、マルコが笑う。仕方がねぇだろう。たった今自覚したんだから。信じられない気持ちもある。俺はミカサが好きだったはずなのに。だけど、今、思い浮かぶのはアルメリアで、泣くの我慢して辛い思いをしてるんじゃないか、とかそんなことばかり考えてしまう。

「自分の気持ちを自覚出来ただけでも大きな進歩だと僕は思うよ」

「そうだな…ご教授ありがとうございましたボット教官。おかげで気づくことが出来ました」

「あとは君次第だ。頑張ってくれたまえキルシュタイン訓練兵」

わざらしく敬語を使って心臓に拳を当て敬礼すると、マルコも教官のような口調になって同じように敬礼をした。相談にはのってくれるし、悪ノリには付き合ってくれるしでマルコは本当にいいやつだ。やはり持つべき者は親友だな。

「ありがとなマルコ。あとは自分でどうにかする」

「わかった。大丈夫、ジャンなら上手くいく」

「だといいんだけど」

「おーい。マルコにジャン。そろそろ寝るぞ」

「いいよ、電気を消してくれ。おやすみジャン。早くアルメリアと仲直りしろよ」

「おう。おやすみマルコ」

長く話し込んでいたようでいつの間にか消灯時間になっていた。下にいたやつらものぼってきて各々寝床へと潜り込む。マルコも横になった。悩んでても仕方ねぇ。本人と話すしかないだろう。そう決心して寝転がると電気が消えた。ゆっくり目を瞑る。おい、アルメリア。いつもはお前が俺を探すけど、今回は逆だ。俺がお前を見つけてやるから待ってろよ。





泣き虫への想い
(気づいたんだ)










「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -