今日も泣き虫アルメリアは俺の傍で泣いている。木陰で本を読んでいたらアルメリアがやって来て背中合わせに座ると泣き出した。しかし、いつもの火がついたような泣き方ではなく、とても静かだ。時々あげるしゃくりがなければ泣いてるとわからない。雰囲気が違うので本を読んだ(ふり)まま泣き止むのを待った。アルメリアは言わないし俺も聞かないけど、なんとなく理由がわかる。そこそこ仲が良かった訓練兵が、兵団をやめたのでショックだったんだろう。少しずつ鼻を啜る音が小さくなって、やがて聞こえなくなった。本を閉じて振り向くと袖で目元を拭っている。

「満足したか?」

「う、ん…」

「ならいい」

「うん………ジャン」

「ん?」

「ありがとう。ジャンのおかげで明日も頑張れるよ」

へにゃり、と笑うアルメリアは104期生がよく知る明るく能天気でとんなことにもへこたれないアルメリアだ。でも、本当のアルメリアはそんなやつじゃない。

訓練兵団は肉体的にもきついが、精神的にもクることが山ほどある。訓練生としてやっていくには自分の中で上手く折り合いをつけなきゃならねぇけど、アルメリアはそれが出来ない。だからこそ、涙という形にする。負の感情を涙と共に流して気持ちを切り換え、次の訓練に挑む。俺はアルメリアのそういう姿勢が嫌いではない。毎回泣かれるのも面倒だが、いつまでもふっきれずにクヨクヨされるよりはマシだ。だから背中を貸するんだ。これでも一緒に卒業したいって思ってるんだから頑張ってもらわなきゃ困る。

「そんな顔じゃ泣いてたのバレちまうぞ。ほら、顔洗いにいくぞ」

アルメリアを連れ立って井戸へ向かう。歩いている最中、アルメリアの手が俺の手の付近を行ったり来たりしている。今日は随分と甘えただ。仕方がねぇな。さ迷う小さな手を己の手で包む。井戸までの道のりは人気がないからつないどいてやろう。

「明日はお前の苦手な立体機動の訓練があるから気合いいれてけよ」

「ジャン…」

「フォローしてやるから心配すんなって」

「いつもごめんね」

「そう思うなら夕食のパン半分寄越せ」

「わかった、あげる。ジャンにはいつもお世話になってるもんね」

「当たり前だろうが」

「なんだか、明日の立体起動は上手くいかそうな気がするな」

「お気楽だなお前は」

「ふふっ」

へらへら出来る程度には回復したようだから背中を貸したかいがあるってもんだ。沢山泣いて明日からまた頑張れるなら、それでいい。





泣き虫の理由
(俺は知ってる)








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