「ジャジャジャジャーーーン!!」

「ふごっ!!」

食事当番だからと厨房へ向かうマルコと別れて一人になった。やることもないし宿舎に戻ろうとした直後にアルメリアが突っ込んできた。完璧に油断していた俺はアルメリアを支えきれずに彼女諸共もんどりを打って倒れこんだ。寝そべる俺の上にアルメリアが乗っかるという男にとっては美味しい状況だが、相手はアルメリアだ。なんのトキメキも感じないどころか怒りが込み上げてくる。

「おい…何だてめぇ、今のふざけた呼び方と行動は!!」

「痛っ!!」

わりと手加減せずに脳天めがけてチョップをしてやった。アルメリアが怯んだ隙に起き上がる。俺の膝に乗ったアルメリアは頭抱えてうーうー呻いているが退くつもりはないようだ。ウゼぇ。

「所構わず飛びついてくるんじゃねぇよ!!ミカサに見られたらどうしてくれるんだ!?」

「ミカサは何とも思わないから大丈夫だよジャン!!」

「なんのフォローにもなってねぇよ!!腹立つわ!!」

「怒らないでよ!!」

「お前のせいで怒ってんだろうが!!」

「だってキース教官が延々と説教するからっ」

なんだこいつ。教官に怒られて凹んでんのか。八の字になった眉の下の瞳が潤んでいる。泣き出す一歩手前、見慣れた表情だ。

アルメリアはよく泣くが、泣くのは俺の前だけだ。他のやつらの前ではへらへら笑っている。だから俺以外こいつが泣き虫なことは知らないし、言ったって信じないだろう。何故俺の前だけで泣く。謎である。

「お前さ、訓練兵団を卒業して俺と離れ離れになったらどうすんだよ。やってけんのか」

常々思っていることを口に出したら本気で心配になってきた。こいつの成績は可もなく不可もなく…つまりは中の中だ。十中八九、憲兵にはなれない。俺は憲兵団、アルメリアは駐屯兵団となったらおいそれとは会えなくなる。卒業までに泣かないようになれんのか?それともこいつは俺がいなくなったら俺以外のやつの前で泣くのだろうか。そう考えたらモヤッとした………なんだ今の。アルメリアから解放されるなら万々歳じゃねぇかよ。不可解な感情に首を傾げているとアルメリアが遠慮がちに俺の団服の裾を掴んだ。

「ジャン以外の人の前では泣かないもん。あと離れ離れとか言わないで。考えただけでも悲しくなる」

俯いているため、見えないが一応泣くのは我慢しているようだ。しかし完全に涙声である。そのいじらしさに不覚にもやられてしまった。おまっ、想像で泣いてんじゃねぇよ。

「あー、わかったよ。ほら、思う存分泣け」

「う、うぅ〜〜〜」

許可を出した途端、俺に抱きついて泣き出した。涙と鼻水で服が汚れようとも怒らない俺は寛容である。あんな風に言われちまったら突き放せないだろうが。よしよし、と頭を撫でてやると勢いが増した。アルメリアの泣き虫が治らないのは、いつも最後には甘やかしてしまう俺のせいかもしれない。





泣き虫と俺
(わかったから泣き止めよ)








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