僕達は人類に心臓を捧げた兵士であるが、同時に思春期真っ只中の男でもあるわけで、訓練から解放された自由な時間となれば自然とそんな話しにもなる。

「やっぱクリスタだろ。荒廃した世に降臨された女神だ。ああ、目映い光がさしている!!あまりの神々しさに目が!!目が!!」

「お前の中のクリスタどうなってんの」

「僕はアニだな。対人格闘でアニが大の男をぶっ飛ばしてるの見るとぞくぞくする」

「俺の友人はドMだったか」

中央に据えられたテーブルに集まって誰がタイプか話しあっている。会話に加わってなくても聞いている者も多く、楽しそうにしている。僕も2段ベットの2階部分に横たわりながら聞き耳を立てていた。この手の話題に参加するのは苦手だが、聞いてる分にはわりと楽しい。

「ミカサとか誰かいないの?ミカサ美人じゃん」

「ミカサは見た目はいいけど中身がな…。それにミカサがタイプなんて言ったらジャンに殺られるぞ。な、ジャン」

反応を窺うように一斉に見上げてくるが隣でごろ寝しているジャンはなにも言わない。寝ていないはずだが無視するみたいだ。なので代わりに答えておく。

「ごめん、ジャン寝てるからそっとしといてやって」

「そうだったか。悪い。つか、さっきからツッコミばっかいれてるお前はどうなんだよ!!」

「俺?俺はアルメリア」

ばしばしツッコミをいれていた彼の口から出てきたのはよく知る人物で、思わずジャンを見る。特に反応はない。

「アルメリアって妹みたいな感じじゃないか?」

「そうか?元気で明るくて見て飽きないけど」

「僕は美人なほうがいい」

「アルメリアはどっちかというと可愛い系だもんな」

「対人格闘の時、サシャの足払い避けようとして盛大にコケてたね」

「そういうとこ可愛いじゃん」

アルメリアをネタにしてどんどん盛り上がる中、僕はジャンが気になって仕方なかった。僕だけが知っている。ジャンとアルメリアは付き合っていて、そしてジャンは意外と独占欲が強い。周囲には隠しているけど、ジャンのことだ。勝手に話題にされて、そのうちキレるのではないかとハラハラしたが、ジャンは微動だにしない。もしかして寝てるのか。

「ジャン起きてるかい?」

「んだよマルコ」

寝ていることになっているので周りに気づかれないよう小声で話しかけるとジャンは寝返りを打った。腕枕をしたまま、片目だけ開いて眉を潜めている。

「その、大丈夫?」

「何が?」

「ほら、アルメリアのこと色々言われて。いくら君達が付き合ってるのを知らないとはいえ、不愉快なんじゃないかと思って」

「別にどうこう言うつもりはねぇよ。好きにさせとけ」

「そうか」

なんだジャン、結構大人じゃないか、と思ったがそういうわけでもなかった。

「あいつらが知ってるのは元気で明るいアルメリアだろう?」

「ん?」

「泣き虫アルメリアなんて誰も知らねぇよ」

馬鹿にするように鼻で笑ってからジャンは壁の方を向いてしまった。唖然となる。今のって、本当のアルメリアを知るのは自分だけという優越感からくる余裕か。ジャン、お前ってやつは…。呆れながらジャンの背中を眺めていると、いつの間にかアルメリアの話しは終わって教官の愚痴大会になっていた。





泣き虫の彼氏様
(とても面倒だ)








「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -