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告白してから早数日。晴れて恋人になったのだが、劇的に何か変わったわけでもない。いつも通りアルメリアを連れて食堂へ向かっていた。
「ジャン!!アルメリア!!」
呼ばれて振り向くよりも先にアルメリア共々近くの空き教室へと連れ込まれる。誰だこんな乱暴なことをするのは。多少立腹しながら見れば犯人は意外にもマルコだった。
「おい何だよマルコ。乱暴だな」
「ごめん、ごめん。あ、アルメリアおはよう」
「お、おはようマルコ」
反射的にあいさつを返したアルメリアだが状況は理解出来てないようで目を白黒させている。とはいえ、俺もマルコが何の用があるのかよくわかってないのだが。
「で?いきなりどうしたんだよ?」
「二人揃ってから言いたかったんだ!!ジャン、アルメリアおめでとう!!」
「何のことかな?」
「付き合ってるんだろう?上手くいって良かった!!」
マルコは輝かんばかりの笑顔である。アルメリアが目で、マルコに言ったの?と、訊いてきたので頷いておいた。告白して部屋に戻ってすぐにマルコ報告したら自分のことのように喜んでくれたからちょっとジーンときたのは内緒だ。
「ありがとうマルコ」
「どういたしまして。ジャンのことをよろしくね。あ、ジャンに泣かされたら僕に言ってよ。お灸据えてあげるから」
「う、うん。その時はヨロシク…」
妙にハイテンションなマルコに迫られてアルメリアがまごまごしている。マルコがちょっとおかしい。どうした。あと、ヨロシクされるのはアルメリアのほうだから。
「あ、もうこんな時間か。教官に授業の準備をするように言われてたから先に行くね」
「ああ。またあとでな」
「それじゃ。アルメリアもあとでね」
「うん。バイバイ」
言いたいことだけ言ってマルコは先に行っちまった。引っ掻き回して去っていったのが嵐のようだ。呆気にとられたが俺たちも食堂に向かわねば。時間的にギリギリで間に合うか微妙なところだ。食いっぱぐれるのは勘弁願いたい。
「俺らも行くぞ、…」
進もうとしたが動けない。腹はホールドされ、背中に何か当たって少しずつ濡れていく。断じて汗ではない………アルメリア、今のどこに泣く要素があった。俺の腹に腕を回して抱きつくアルメリアは背中に顔を押し付けて泣いてるようだ。たまにずびっと鼻を鳴らしている。何故このタイミングで泣くかわからねぇ。今すぐ泣き止め、飯を食いにいけなくなる。
「何で泣いてんだよ」
「嬉しくてっ」
「はっ?」
「マルコが祝福してくれたのが嬉しい」
「…そんなことで泣くなんてバカか?」
「バカじゃないもん、ぐすっ」
ついに嬉し泣きという泣きのレパートリーが増えやがった。同時に俺の心労も増えることになる。アルメリアの手を外して正面から抱き締めるとわんわん泣きだしたのであやす。後頭部を撫でながら教室に設置されてる時計を確認すると完璧にアウトだった。
「おーい。誰かさんのせいで朝食食いっぱぐれたじゃねぇか。どうしてくれるんだぁ?あん?」
「痛い痛い!!きゃー!!」
細っこい身体を力の限り抱き締めると悲鳴を上げたが手加減しない。お前のせいで朝飯食えなかったんだからこれは罰だ。甘んじて受けろ。大体、俺達は始まったばっかなんだから、こんなことで一々泣いてたら身がもたないだろうが。嬉しい時ぐらい笑っておけ。
泣き虫に祝福を
(本当、泣いてばっかだな)