愛した夜が明ける | ナノ







私のせいでアリシアが大怪我をしたことがある。命綱なしに崖を登るという訓練中に足を滑らし、後に続いていたアリシアを巻き込んで落下した。実際は落ちてくる私を見て、アリシアがクッション代わりになってくれたんだ。おかげで私は傷一つなかったけどアリシアは地面に叩きつけられ、血を流しながら倒れていた。高さがないとはいえ、私の全体重を受け止めての落下だから物凄い衝撃だっただろう。ピクリとも動かないアリシアに頭が真っ白になったのを今でも覚えてる。気絶したアリシアは医務室に運ばれた。包帯を巻いて青白い顔色のまま眠り続けるアリシアに、このまま目を覚まさないんじゃないかと不安に襲われたけど杞憂に終わった。目覚たアリシアはけろりとしていた。名誉の勲章、と包帯を指差してへらへら笑うから、頭に血がのぼってふざけるな!!と、怒鳴りつけた。感情を露わにする私に集まっていた同期達がぽかんとしていた、と後でアリシアが教えてくれたが、その時は気づけなかった。私は本当に心配したんだ。自分に憤りを感じ、そして泣きそうだった。なのにアリシアときたらごめん、と謝るものの反省した様子はなかった。清々しいほど笑っていた。

「私さ、目が覚めて真っ先に思ったのがアニのことだったんだよ。怪我はしてないかな、ってね。だから、アニに傷一つなくて安心してつい。心配かけてごめんね。でも私は間違ったことをしたとは思わないよ。だって友達が怪我するとこなんて見たくないもん」

それで自分が怪我してたらざまないじゃないか。怒るのもバカらしくなってため息が出た。それからアリシアにつられてちょっとだけ笑った。バカだね、あんた。友達に怪我させたくなかったなんてそんなの私も一緒だよ。










「覚えてる?私が訓練の途中で崖から落ちたことがあるだろう。もしもあの時あんたが私を庇わなかったら、私は死んでたかもしれない。そしたらこんなことにはならなかっただろうね。アリシアは私を助けたことを後悔してないかい?」

「そうだね。アニを助けてなかったら多くの兵士が死なずに済んだかもしれない。でもね、やっぱりアニを助けたことを後悔なんてしてないよ。だってアニは私の大切な友達だもの。今だってそうだよ」

地下へと続く道から差し伸べられた手を取れなかった。フードの奥のアリシアの瞳が潤んでいる。こんなになってまで私を友人だというアリシアはバカだけど、それは私も一緒だ。あんたやアルミンを殺し損ねたせいでここまで追い詰められたんだからざまない。そろそろ本気で殺らないと足元掬われかねないけど出来るだろうか。怪我をさせるのも嫌だったあんたを、大切な友人を私は殺せるのだろうか。





陽だまりに落下したやわらかい








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