夜です、平日です、学校です。兄弟全員揃って登校するという逆巻家ルールがあるので皆リビングに集まった。しかし、私とユイちゃん、兄弟のうち5人は集まったけど1人足りない。末っ子のスバル君だ。このままでは遅刻する、誰か呼んで来いとなったがその誰かは私になった。何故、私。と、思ったが断る理由もないのでスバル君の部屋に向かう。
「スバル君起きてる?」
ドアを二回ノック、待つが反応がない。もしかして寝坊?いや、サボるつもりで無視しているだけかも。勝手に入ってもいいものか、と迷ったが時間がないので怒られるの覚悟で入室した。
「…いない」
スバル君の姿がない。殺風景な室内で存在感を放つ棺桶、おそらくこの中だ。ただ、寝ているのか引き籠っているのかはわからない。
「おはようございます。学校に行く時間ですよー」
取りあえず声をかける、無反応。コンコンと棺桶をノック、応答なし。さすがにイライラしてきてドンドンと強めに叩きながらスバルくーーん!!!と、叫んだ。棺桶から距離をとる………あれ、おかしいな。いつもならここらで、うっせぇんだよバカ女!!とか、そんな暴言と共に棺桶の蓋が飛ぶのに。あれだけ騒いだんだから目を覚ましたはず。観念して出てきてもいい頃なんだけど…。
じれったくなって蓋を開けようとしたがびくともしない。これ、中から押さえてるね。起きてんじゃん。理由はわからないけど出てくる気がないみたいだ。これはレイジさんを呼んだほうがいい。早々に諦めて一旦部屋を出ようとしたが、何かに引っかかり前に進めなくなった。振り向くと蓋が僅かに開いている。そこから手が出ており、スカートの端を摘まんでいた…これスバルだよね。スバル君しかいないね。
「なんで手だけ?そんなに出たくないの??スバル君は私にどうしてほしいの??あの…お姉さん困っちゃうなー」
「同い年だろうが」
「おお、ツッコんだ」
ツッコミはするが会話をする気はないようで蓋を閉めてしまった。おぉぉい!!本当に何なの!!今日のスバル君は意味不明だよ!!反抗期?反抗期なの!?むしろスバル君の場合は年がら年中反抗期だよね!!!
「ちょっとスバル君!?何がしたいの!?意味わからないよ!?!?取りあえず出てきてよ!!!」
棺桶を揺らすがスバル君は無言を貫いている。これもう無理じゃない?と諦めかけたところで気づく。引きとめたってことは行くなってことだよね?それに声が弱々しかった。これってただ事ではないのでは…?何があったかわからないけどほっとけない。ジャケットから携帯を取り出して二人そろって学校を休む、という旨をメールで伝えた。私ってスバル君に甘いね。
「スバル君具合悪いの?でも吸血鬼って病気にならないんだよね。もしかして吸血鬼にしかならない病気とか!?」
「んなわけあるか」
2度目のツッコミが入ったけど改めて聞くと声に覇気がない。病気じゃなくても元気はないようで段々不安になってきた。
「出来ればお顔を見せていただきたいのですが、ダメですよね、ごめんなさい」
「………」
最早ツッコミすらしてくれない。引き留めておいて放置とか…もしかして私がいる意味ない?どうするのこれ。
困り果てていると棺桶の蓋が開いた。伸びてきた腕が手首を掴み、引っ張るもんだからバランス崩して倒れる。咄嗟に目を瞑ると固いような柔らかいような物にぶつかった。背後で何かが擦れるような音が聞こえる。ガゴッ、と一際大きな音がして静かになったので恐る恐る目を開いたが、真っ暗で何も見えない。
「泣きそうな声だしてんじゃねぇよ」
至近距離でスバル君の声が聞こえた。どうやら棺桶の中に引きこまれたようだ。下敷きにしているのはスバル君だろう。
「えぇぇ。どうしてこうなった」
「人の上で暴れんじゃねぇよ。キツイ…」
「え。やっぱ具合悪いの?」
「違げぇ。ダルいだけだ」
ダルい、ってシュウさんか。とか思ったがそんなこと言っている場合ではない。棺桶から出れないってことはよっぽど辛いのだろう。と、ここで一つ疑問が出てきた。
「どうして蓋開けてくれなかったの?隠れる理由ないよね?」
質問をするとスバル君は黙ってしまった。顔こそ見えないがムスッとしているのが伝わってくる。どうしてそこで不機嫌になるかわからない。不愉快になるような質問じゃないよね?
「こんな姿見せられないだろ」
「こんな姿?」
「だから、弱ってる情けない姿だよ」
「………それだけ?」
「なんか文句あるのか?」
「いえ何も!!」
「たくよぉ…それぐらい察せよアホ!!」
何故か怒られたが私からしたらそんな理由?って感じだ。辛い時ぐらい素直になればいいのに。スバル君はプライド高いもんね。意地っ張りなスバル君が可愛くておかしくて吹き出しそうになるが、ここで笑おうものなら機嫌を損ねるので必死に堪えた。
「そうかそうか。ごめんね。でも、出てきれくれないと何にもできないよ」
「何するつもりだよ」
「看病とか」
目が慣れてきたことによってスバル君の輪郭が浮かび上がる。ここだと顔色を確認できないから不便だ。せっかく休んだんだから看病するべきだろうけど、体調不良…ダルい吸血鬼の看病なんてどうすればいいんだろう。
「取りあえずリンゴ食べる?」
「リンゴ?」
「人間は風邪引いたとき果物食べるんだよ。桃のほうがいい?」
「アホ。俺は吸血鬼だ。それに風邪じゃねぇのに風邪の時の看病しても意味ねぇだろ」
「まぁそうだよね」
スバル君の言う通りだ。だったら、本人の希望に沿ったことをしたほうがいいだろう。率直にどうして欲しいか訊くとやや間があってから答えた。
「看病、とかいいから」
「うん」
「俺が元気になるまでこうやってくっついてろ」
ぴと、っと頬っぺたと頬っぺたが重なった。間近で感じる息遣いに身じろぐと抱きしめる腕の力が強まった。体調が悪いせいなのか甘えたになっている。こんなスバル君は珍しくて驚いたけど、せっかく甘えてくれたのだから思いっきり甘やかそうと思う。どうせ学校も休んだしね。
「それじゃスバル君のために頑張らないと」
「何頑張るっていうんだよ」
「元気になれ〜って念じながら力いっぱい抱きしめる」
「頑張るってそういうことかよ」
「そうです。ちなみに、今日は私もスバル君も学校お休みだよ」
「お前も?」
「うん。だから誰にも気兼ねすることなくくっついてられるね」
「そうか。それはいいな」
頬摺りしてくるのでお返しとばかりにちゅうをする。スバル君は一瞬固った後、ぎゅうぎゅう抱きしめながら反則だろ…と呟やいた。スバル君が元気になるよう頑張るって言ったんだからこれぐらいはしないとね。
恋の病は重症です
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題名がサムいね!!色々詰め込んだら長くなりました。弱っているところを見られたくなくて最初は突っ張っていたけど最終的には甘えてくるスバル君を看病するという管理人のツボにくる素敵なリクエストだったものでつい。行くなと言えないのでスカートの端摘まんで引き留める、頬と頬をくっつけるスバル君が可愛いと思います。結局看病してない^p^
珱様、リクエストありがとうございました!!お持ち帰り、苦情等は珱様のみ可です^^