酸素が足りなくて思いっきり吸い込むと途端に咳き込んでしまった。なかなか収まらない咳に呼吸はか細くなっていく。喉と身体の節々が痛んだ。風邪を引いて数日経つが病状は良くならず、ベッドから抜け出せない日々が続いている。

「おい」

朦朧としていた意識がはっきりしていく。重い瞼をどうにか持ち上げるとベット脇にスバル君が立っていた。風邪を引いて以来会っていなかったから懐かしく感じた。

「スバル君…久しぶり」

「久しぶりじゃねぇよ。具合はどうなんだ」

「大分、良くなったよ…ゲホ、ゲホ、ゲホッ」

「どこが良くなったんだ。ほら。水、飲め」

「ん…」

上半身を起こし、差し出されたペットボトルを受け取って飲んだ。冷たい水が火照った身体に沁みわたる。半分ほど飲み干すと渇きが癒されたのでスバル君に返せばナイトテーブルに置いた。

「もういいのか?」

「うん」

「そうか。じゃ、こっちこい」

スバル君は私を引きずり出すとベッドへ座わり、私を足の間に収めた。回された手が背中を撫で始める。ただそれだけだというのに咳は収まり、呼吸が楽になった。

「熱もあるみたいだな」

「微熱、だよ」

高熱というのも苦しくて辛いが微熱も倦怠感がまとわりついて辛い。スバル君に密着すると冷たくて気持ちが良かった。頭を預けて脱力しているとお腹が鳴る音がした。私ではない。スバル君を見れば赤面している。

「お腹空いたの?」

「んなんじゃねぇよ!!」

スバル君は否定するが再びお腹の鳴る音がして、苦虫を噛み潰すような表情になった。片手でお腹を押さえているけど誤魔化せない。私が体調を崩してからスバル君は吸血をしていない。身体の負担を考えてのことだ。その間、スバル君は空腹なわけで、我慢させてしまって申し訳なく思う。

「ねぇ、スバル君。ユイちゃんの血吸わせてもらったら?私からも頼んであげるから」

本当は私以外から吸ってほしくないけどユイちゃんなら…という思いで提案したのにスバル君は眉間に皺を寄せた。顔には不服と書いてある。

「いらねぇっつってんだろ」

「我慢するのは身体によくないよ」

「うるせぇな。人の心配より自分の心配しやがれ」

強情なスバル君に困ってしまう。飢えたままにしとくのは可哀想だ。私の血しか吸わないというのなら私の血をあげればいい。長引いてはいるが、重症なわけでもないしきっと大丈夫。パジャマのボタンを外して胸元を露わにする。スバル君は驚嘆している。

「何してんだお前!!」

「風邪を引いてるから不味いかもしれないけど…」

「そういう問題じゃねぇだろ!!こら、近づくな!!」

「いいから飲んで。ほら」

熱のせいか、日頃より大胆になっている。胸元開けたまま狼狽するスバル君に詰め寄る。肩を突っ張ねられるがその手は弱々しい。視線は首筋に固定され、喉仏が上下に動いた。

「このっ…どうなったって知らねぇからなっ!!」

言葉は乱暴だけど動作は優しくて、スバル君は私を静かに寝かせると残りのボタンを外していく。勢い余って糸を引きちぎりそうになっているが、それでも普段と比べたら丁寧だ。

「噛むぞ」

「うん」

首筋に牙が押し付けられる。身体を強張らせるとむき出しの肩を撫でられた。力を抜けたのを見計らって牙が刺さった。ちゅるちゅると少しずつ血を吸われる。いつもの激流に飲み込まれて上下もわからなくなるような激しさはなく、身体が浮いているような、フワフワした感覚だ。ああ、気持ちいい。

「く、っ!!」

「はぁ、不味くなるどころか熱くて舌が蕩けそうなぐらい美味い。どうなってんだよ…んっ」

「ひぁ!!ああ、あ…!」

「んな声で啼くな。歯止めきかなくなる」

甘い声が吹き込まれて余計に熱くなる。舐めたり吸ったりを繰り返すスバル君に堪らなくなって頭をかき抱いた。

「名前?」

「ごめんね、スバル君、んあ、ぁ、治ったら、いっぱい吸って、いいから!!」

身体を気遣いながらも私だけ求めてくれたことが嬉しかったから、何も考えずにそう口にして、そのままピークに達して気絶した。

「気絶したか…まぁいい。お前自ら許可したんだからな。覚悟しとよ、名前」

不適に笑うスバル君が囁いた言葉の意味を思いしるのは完治した後のこと。





続きは後ほど










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病弱ヒロインのはずがただの風邪っぴきヒロインになってしまいました。病弱どこいった…。スバル君が看病ということで一応それらしいことをさせたつもりです。水持ってくるとか背中撫でるがスバル君の精一杯の看病です。



マミ様、リクエストありがとうございました!!病弱の部分が抜けてしまってすみません!!お持ち帰り、苦情等はマミ様のみ可です^^







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