「スバルさん、これでよければ飲んでください」

森の奥深く、こじんまりとした家に着くと名前は腕を持ち上げた。服が裂けたところから血が滲んでいる。俺は食事にきたのだからこれが本来の目的だが、気にくわない。

「んな汚ねぇ傷口から呑めって言うのか?」

「そういうわけでは…」

「いいからさっさと身を清めてきやがれ!!」

一喝すると名前は部屋の奥へと消えた。壁に凭れて待っているとこざっぱりした名前が戻ってきた。道具を持ち出して治療を開始する。手際がよいが、最後に残った腕でもたつき始めた。片手の治療は容易ではないらしい。なかなか終わらない作業に我慢出来なくなった。

「遅いんだよお前!!貸せ!!」

椅子を持ってきてそこに座る。名前から包帯を取り上げて、見よう見まねで巻いていく。名前を見ていた分には簡単に出来そうだと思ったが、意外と難しい。きつすぎると痛いと喚くし、緩すぎるとほどけてしまう。失敗してはやり直すを繰り返す。

「んだよこれ、上手くいかねぇ。めんどくせぇな」

「スバルさん私、自分でやりますよ」

「うっせ、気が散るから黙ってろ」

「は、はい…」

どうにか包帯を巻き終えた。綺麗にとは言い難いが、見れる程度にはなっているから充分だろう。ちょっとした達成感に包まれた。

「ありがとうございます。おかげで助かりました」

「てめぇがチンタラしてっから代わりにやっただけだ」

「ふふっ。なんだか、懐かしいですね」

「は?」

「誰かに手当てしてもらうの久しぶりで」

名前は包帯を巻いた腕をさすりながら微笑んでいる。何だかそう、嬉しそうに。

俺と出会った時から名前は一人で暮らしていた。しかし、この家には物が溢れている。皿もスプーンも二組ある。テーブルと対になる2つのイス、奥の寝室にはベッドが二つ。それが意味することに興味はない。

「んなことどうでもいいんだよ。さっさと血を寄越せ」

「どうぞ」

素直に身を委ねる名前を引き寄せる。どうでもいいんだ、こいつの抱えているものなど俺には関係ない。血さえ飲めればそれで。









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