HAPPY BIRTHDAY !!
ローズ、クレマチス、朝顔。白い陶器の表面を色とりどりの可憐な小花が彩る。配置が絶妙で鮮やかだ。縁に描かれたネイビーのレースと取っ手部分の金細工が全体を引き締めて上品な仕上がりになっている。素人でもわかるいい品だ。ソーサーにも同じような模様が描かれており、箱もオシャレだ。
「おー…高そうなティーカップ」
「淑女たるべき者、自分専用のティーカップの1つや2つ所持すべきです」
淑女はマイティーカップを持つのが必須なのか…?よくわからない理屈だが、自分だけのティーカップがあるのも悪い気がしない。
「ティーカップをくれたということはレイジが紅茶を淹れてくれるのかな?」
「ご自分で淹れてください」
「素晴らしいティーカップで素晴らしい紅茶を飲むべきだと思わない?この屋敷において紅茶の入れ方を熟知しているのは一人しかいない。ね、レイジ」
「貴方という方は…仕方ないですね。そこまで言うのであれば淹れて差し上げましょう」
「やった!!ありがとうレイジ」
レイジの淹れた紅茶は文句なしに美味しい。このティーカップで飲めば格別だろうな。年甲斐もなく喜んでいたら真顔で見つめられた。ちょっとはしゃぎすぎたか。
「貴方は時々、無邪気になりますね」
「…うん?」
「わかってないのならいいです(まさかティーカップ1つでここまで喜ぶとは…)」
無邪気だって?この歳にして無邪気はないと思うけど。己の行動を省みてもまったくわからない。そうこうしているうちにレイジにティーカップを取り上げられた。
「どこ持ってくの!?」
「紅茶を飲むのでは?」
「あ、飲みます。お願いします」
「まったく。名前が飲みたいと言い出したのでしょう。それに、一度差し上げた物を返してもらおうなどしませんから安心なさい」
「すみません…」
深々と嘆息されて消沈する。これではどちらが年上かわからないので落ち着かねば。レイジが紅茶を淹れるなら私はお茶請けでも用意することにしよう。
「お茶請けは何がいい?」
「貴方が作るのですか?」
「いやならやめる」
「いいえ、作りなさい。ただし、私が最高の紅茶を淹れるのですから、それに見合うものでなければ認めませんよ」
「頑張ってレイジを満足させられる物を作ります」
「なら結構です」
こんな言葉の応酬も相手がレイジだから出来るのであって、なかなか楽しい。二人っきりのお茶会はきっと有意義な時間になるだろう。
次男から叔母さんへ
ティーカップ。
あまりにも喜ぶから面食らうレイジさん。書いててこの二人の組み合わせもいいなと思い始めました。
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