頻繁に吸われているから今日ぐらいは休ませてほしいと言った。けして拒否したわけではなく、お願いをしたのだ。なのにこの仕打ち!!

「ユーマァァァ!!!絶対離さないでね!!離しちゃダメだよ!!」

「あんまうるさくすると落とすぞ」

顔を顰めるユーマに脅されるが、叫ばずにはいられない。血を吸わせなかったのが気に入らないようでユーマは暴挙に出た。私を抱きかかえてベランダに出ると手摺の上に立った。私の足は床から離れており、半ば宙に放り出された形である。支えは腰に回ったユーマの両腕のみ。もしユーマが手を放したら地面へ真っ逆さまだ。ここは二階だから、打ち所が悪くない限りは死なないけど確実に骨は折れる。

「何しちゃってんのユーマ君!!」

「ルキのマネ」

「ルキ君のマネ!?」

「そんなことより、このままだと落ちるぜ。いいのかよ?」

「いいわけないでしょう!!ひっ!?」

ユーマが私の身体を揺らす。それに合わせて足がプラプラと揺れる。このまま投げ出されそうな気がして必死にユーマの首にしがみついた。履いていたスリッパはすでに落下している。同じ道は辿りたくない。

「くっ、今にも落ちそうだな」

「こ、こんなことするなら暫く血をあげないからね!!」

「お前、そんなこと言える立場じゃねぇよなぁ?ん?」

「ひっ!!」

ユーマが片腕を外すと身体がずり落ちた。不安定な状態に加えて風が吹き抜けるので今にも落っこちそうだ。

「怯えた表情も悪くねぇぜ?」

ユーマの唇が吊り上がる。もうやだ、もう無理。耐えられない。嗜虐的な笑みに心を折られてギブアップを宣言する。

「わかりました!!私が悪かったです!!吸っていいんで今すぐ助けてください!!」

「よし。いただくからな」

「はぁ!?」

空いていた手が太ももを抱えて身体が持ち上げられる。ちょうどユーマの顔のあたりに私の首筋がくるように固定された。くわっ、と大きく口を開いたユーマが首筋に食らいついた。

「いっ―――!!!」

骨に牙が達するんじゃないかというほど深く刺さる。あまりの痛みにユーマを突き放したくなるがそんなことしたら落下してしまうので辛うじて耐えた。ボロボロと涙がこぼれて視界不良になる。周りがよく見えないので余計に恐い。

「い、はぁ、やだ、やめてぇ」

「やめるわけ、ねぇだろう、ん…」

後ろへジャンプしてベランダに降りたユーマはそのまま中へ入ると私諸共ベッドに倒れこんだ。その際、牙が肉を抉った。

「あああっ!!」

「血が苦げぇ。恐がってるからか?」

顔を上げたユーマの口許は真っ赤になっていた。傷口から血が流れ出る感覚がする。親指で眦に溜まった涙を拭ぐわれて徐々に意識が戻ってくると怒りが沸いてきた。

「ユーマなんて嫌い!!」

「ああ!?嫌いとか言ってんじゃねぇよ!!」

嫌いと言ったのが気にくわなかったのか、ユーマの声が一回り低くなる。嫌われるようなことをするのが悪いんだ。

「恐いし痛いし最悪…ぐすっ」

「こんぐらいで泣くんじゃねぇ」

心底めんどくせぇとばかりに大きな溜め息を吐いて乱暴に頭を掻いている。ユーマのせいなのに何よその態度。もう知らない。タオルケット被ってふて寝しようと思ったのに簡単に剥ぎ取られてしまった。

「仕方ねぇな。優しくしてやるよ」

頬にキスされる。そのままユーマの顔は下降し、流血する傷口に舌を這わせる。まるで子猫がミルクを舐めているかのようだ。くすぐったくて身を捩るが押さえこまれる。戯れのような行為なのに少しずつ気持ちよくなっていく。それどころか微弱な快感では物足りなくなってきた。熱い吐息を溢すとユーマは気づいたようでしたり顔で笑う。

「嫌なんじゃなかったのか?」

「ユーマの、ユーマのせいっ!」

「人のせいにすんな。快楽に順応なのはお前の性だろうが」

再び首筋に顔を寄せると吸い始めた。舐められた時よりも強い刺激に声が出る。気持ちいい、気持ちいいけど、まだ足りない。牙を刺してもっと吸って。こんなにも貪欲になったのはユーマが私に快楽を教えこんだからだ。

「んぁっ!!」

「んー、だいぶ甘くなってきたぜ」

「はっ、はっ、ぅ…」

「物欲しそうな顔しやがって。おら、もっと善くしてやるから、お前の全部を寄越せ」

「あげ、あげるから、ユーマも、ちょうだい…?」

「っ、誘ってんじゃねぇバカ」

ユーマの首に腕を回すと痛いくらい抱き締められて、望み通りのものが与えられた。言葉は乱暴で目もギラギラさせてるくせに降ってくるキスも私に触れる手も優しいから、どんなに酷いことをされても結局は身を委ねてしまうのだ。





甘くて苦くてやめられない










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念願の初ユーマ君!!しかし微妙に口調がわからないです。スバル君やアヤトよりも乱暴な感じを意識したんですが、こんなもんでしょうか??



お題サイト 誰そ彼様より
「甘くて苦くてやめられない」使用



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