階段の途中、踊り場まで降りると階下にスバル君がいた。学年が違うせいかで学校で会うことはあまりない。なんだか嬉しくなって、スバル君の元へ駆け降りようとした。
「スバル、くぅん!?」
「あ?名前、ってお前!!」
上を向いたスバル君の目が見開かれる。それもそのはず、縺れた足は地を離れ、私は重力に従い落下しているのだから。我に返ったスバル君が階段を駆け上がって受け止めてくれたが、勢いを殺しきれずに二人揃って落ちていく。ゴロゴロと転がって、壁にぶつかり漸く止まった。
「い、いたっ…くない?」
「っ、てぇな」
「スバル君!?大丈夫、怪我はない!?」
「吸血鬼なんだから柔にできてねぇよ。お前のほうこそ大丈夫か?」
気づけばスバル君を下敷きにしていたので慌てて上半身を起こした。問われて確認したが怪我はない。勿論、痛みも。私を庇ったスバル君のほうが心配だ。
「心配だから一応保健室に行こうよ」
「大丈夫だって言ったら大丈夫なんだよ。あんましつけぇと吸血すんぞ」
「ごめんなさい!!もう言わないから許して!!」
機嫌を損ねたスバル君に引き寄せられて覆い被さるような形になった。そのまま喉元に牙を当てられる。首筋じゃなくて喉だ。さすがに恐くて必死に謝った。
「たくっ。なんでこうもそそっかしいんだ」
「だってスバル君が…」
「だって、って何だよ。俺のせいにするつもりか」
「違うよ!!学校でスバル君に会えたのが嬉しかったの。シュウさんやレイジさんだったらこんな風にはならないよ」
シュウさんやレイジさんだったら学校で会うの珍しいな、ぐらいで終わっただろう。相手がスバル君だったから嬉しくてはしゃいでしまった。
理由を話すとスバル君は黙ってしまった。そのまま抱きしめられて身動きとれなくなる。急にどうしたんだろう。よくわからないけど空気を読んで大人しくしてみる。
「俺だからとかそういう理由ならまぁ、許してやるよ」
「ん?ありがとう…?」
「それにしても、お前よく平気でいられるな」
「へ?」
「俺、襲われてるみたいになってんだけど」
「あっ!!!」
言われて気づく。私はスバル君の腹部に乗っかっている。何も知らない人が見たら私がスバル君を押し倒したように見えるだろう。退こうとしたら腰をホールドされてしまった。スバル君は慌てる私を見てニヤニヤしている。こんなとこ目撃されたら明日から学校来れなくなる!!
「見上げるっていうのも悪くない」
「いやぁぁぁ!!スバル君離して!!」
「うっせぇ喚くな。助けてやったんだから礼よこせ」
「お礼って血ですか?」
「それ以外に何がある」
ですよね!!スバル君は私ごと起き上がると保険室…いや屋上か?と、ぶつぶつ呟いている。どうやら今すぐ吸うみたいだ。家に帰ってからじゃダメなんだね。場所移動してくれるだけでも有難いと思っておこう。
「お手柔らかにお願いします」
「考えといてやるよ。にしてもお前、俺に逢えたのが嬉しくてはしゃいだ末に落ちたとか…本当、名前は俺のこと好きだな」
からかわれているのかと思ったがそうではないようで、むしろ嬉しそうに笑っているからが胸がきゅんってなる。
一つ屋根の下に暮らしているから家では一緒にいられるけど、学校となればそうもいかない。それぞれの教室で過ごさないといけないから、会うことは滅多にない。それに寂しさを感じて同じ学年の同じクラスだったら良かったのに、と思ったりするわけで…詰まるところ私はずっと一緒にいたいほどスバル君が好きなんだ。重症なのは自覚している。
「えーと、それはうん、そう、なんですけど…」
「聞こえねぇよ。ちゃんと言ってみろ。俺にも聞こえるように、な」
「聞こえてるくせに…うぅ………そうです!!その通りです!!」
意地悪なスバル君にやけになって、片時も離れたくないぐらい好きです!!と、叫んだらスバル君は熟れたリンゴのように真っ赤になった。
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\バカッポー/
傍目から見たら「うぇぁ…」となりそうな夢主とスバル君を書くのは楽しかったです。普通に甘い話しになる予定だったのに…どこで間違えたんでしょう(笑)
お題、誰そ彼様より
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