「「「Trick or Treat!!」」」

「………」

「僕としてはイタズラした「言わせるか」

それは一年で一回、今日だけ言える特別な言葉。椅子に座っていたら三つ子に囲まれて、例の台詞を言われた。余計な一言を付け足そうとしていたライトの顔面にクッキーの袋を押し付ける。お前の魂胆なんてお見通しなんだよ。

「叔母さん、叔母さん。僕には?」

「あるよ。ほら」

「用意してんのかよ」

「当たり前でしょうが」

ジャック・オ・ランタン型(カボチャ味)のクッキーを渡せばカナトは早速食べ始めた。要求通りにお菓子をあげたというのにアヤトは不満そうである。

どこで知ったのか、ハロウィンという行事を三つ子がやり初めてから早うん十年。何の知識もなかった初回こそ酷い目に遭わされたがそこから学んだんだ。以降は毎年欠かさずにお菓子を用意している。

「ちぇ。これで終わりかよ。せっかく仮装したっていうのによぉ」

「毎回毎回よくやるな…」

吸血鬼なのにモンスターの仮装をしているのを見ると何とも言えない気持ちになる。アヤトは頭にネジをつけて、顔には縫い目がある。フランケンシュタインのようだ。ライトはミイラ男のようで顔や手に包帯を巻いている。カナトは真っ黒な翼と三角形の角を生やして悪魔の仮装だ。

「なんかさーここ数年は反応が薄くなってきたよね」

「つまらないです」

「知るかっ!!」

背後に回ったライトが人の頭に顎を乗せてぶーぶー言ってるのでうざったい。顎を押して退かす。クッキーを食べ終えたカナトは物欲しそうな目をしているが、気づかないふりをする。お菓子はもうないよ。

「このまま終了するのもつまんねぇから何かしろよ」

なんという無茶ぶり。お菓子を渡してお仕舞い、って流れがつまらないらしい。元々そういうイベントなのだが、三つ子は引き下がりそうにない。ふむ。そこまで言うならたまには趣向を変えようか。

椅子から立ち上がってベッドへ行き、シーツを引っ張り出して頭から被った。これで完成。ちょうど目の前にいたアヤトに向かって大きく手を広げる。

「何してんだよ」

「シーツのお化け」

「は?」

「Trick or Treat」

三つ子は目を丸くしている。たまにはやる側に回ってもいいだろう。どうせお菓子なんて持っていないだろうから、困ればいい。どんな反応が返ってくるかワクワクして待っていると三人は互いに目配せしてからニヤリと口元を歪めた。それほど顔は似てないというのに笑い方はそっくりで、彼らは三つ子であることを思い知らされる。変なスイッチを入れてしまったようだ。

「あ、やっぱいいや」

「どこ行くんだよ」

それとなく逃げようとしたけど失敗して無理矢理椅子に座らされた。アヤトが肩を、両腕をライトとカナトがそれぞれ押さえつけるので立ち上がることすら出来ない。冷や汗が吹き出てくる。

「俺達は菓子持ってないから悪戯するんだろ?何をするのか楽しみだな」

「つまらない悪戯をして失望させないでくださいね」

「んふ。そうなったなら僕が悪戯ってどうやるか手取り足取り教えてあげるよ」

ずいっ、と顔を近づけてくるので逸らすが何処を見ても誰かしらと目が合う。本気でやるつもりなんてなかったから何も考えてない。仮にしたとしても難癖つけるに決まってる。何で悪戯する側がされる側から追い詰められてるんだろう。それこそ、ちょっとした悪戯心だったのに。いつも困らせられているんだからたまには仕返したっていいじゃないか。ええい!!いつもやられっぱなしだと思うなよ!!

「なめるなっ!!」

日頃の不満と怒りを爆発させて三つ子を振りほどくと部屋を飛び出した。しかし、その程度で三つ子が諦めるわけもなく、追いかけてきた。カナトが泣きながら追いかけてくるので軽くホラーである。

「何で泣いてんだよカナト」

「叔母さんが僕から逃げるからっ!!」

「はいはい。叔母さん捕まえたら好きに出来るから頑張って捕まえよう。カナト君は右から、僕は左から回り込もうか」

「…ライトに従うのは癪ですが、速やかに捕獲するためなので仕方がないですね」

「なら、俺様は正面からだな。どうせなら誰が先に捕まえるか競争しようぜ」

「ああ、成る程。一番に捕まえたら叔母さんを独り占め出来るんですね」

「いいねぇ。俄然やる気が出てきたよ」

人を出しにして変な勝負を始めた。ライトとカナトは散らばり、アヤトはスピードを上げた。3対1で分は悪いが義兄さんのところに逃げ込めば三つ子は手を出せなくなる。そうすれば私の勝ちだから、頑張って逃げ切れ私!!

「さっさと捕まりやがれ!!」

「絶対嫌だ!!」

筋肉痛になるのを覚悟でがむしゃらに手足を動かす。ハロウィンはいつの間にか鬼ごっこへと変貌していた。







×叔母











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甥っ子達と叔母さんのハロウィンは通常運転です(笑)



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