俺は誰にも迷惑をかけていない。床に転がってたわけでもバスタブに沈んでたわけでもない。自分の部屋で寝ていた。自室というのは己だけの自由にしていい空間なんだから、誰にも邪魔をする権利はないはず。なのに何で俺は部屋から追い出されてるんだ。

「ちょっと借りるから出ていってね」

大きな荷物を抱えて入ってきた名前に外へと放り出されてドアの前に立ち尽くす。戻ろうにも鍵をかけられ中に入れない。これがアヤト、スバルあたりならぶち破るだろうが俺は労力を使うようなことはしたくない。廊下で寝たっていいけど今日は固い床で寝はたくはない気分だった。

「私の部屋で寝てていいからそこらへんで寝ないでよ」

どうするか決めかねていると名前がそう言ったので大人しく従うことにした。それにしても人の部屋で何してんだ。掃除か?………ま、いいか。気にすることもない。自己完結をして名前の部屋に行き、天蓋つきのベッドに寝転んだ。これでゆっくり眠れる、と思ったのに。

「シュウ、シュウってば」

身体を揺さぶられて目が覚める。眠ってから起きるまで1、2時間ってとこか。そんな短時間で満足できるわけもなく、中途半端に眠ったせいかダルい。

「何だよ…まだ何か用?」

「部屋に行こう」

「俺はここで寝る」

「そう言わないで。ほら戻ろう」

戻ろってお前が追い出したんだろうが。うっすら目を開けて睨めつけると名前はたじろいだ。2回も睡眠を妨げられたせいで俺の機嫌はすこぶる悪い。

「ご、ごめん。でも、自分の部屋なら落ち着いて寝れるでしょう?」

「別にここでも変わらない」

「そう言わないで、ほら行こう」

やけにしつこくて、これ以上抵抗するのも面倒だったので嫌々ながらも自室に向かう。もう何処でもいいから寝かせてくれ。

「はい。部屋の前についたよ」

「一々言わなくていいから早くしてくれ」

「じゃ、シュウが先にどうぞ」

「は?」

そのまま入室するかと思いきや名前は扉の脇きに立ち、先に入るよう促してきた。何のつもりだろう。怪しんでいると、早く!!と急かされたので渋々ながら開ければそこは別世界だった。

天井に星が散りばめられている。人工的に作り出された星空で、床には見慣れない機械が置いてある。どうやら家庭用のプラネタリウムらしい。あちらこちらに焚かれたアロマがゆらゆら揺れて、ピアノの静かな旋律が流れる。内装もちょこちょこ変わっていた。

「睡眠に良いと言われてるものを詰め込んでみた!!」

「何で」

「何でって、シュウの誕生日だから」

「誕生日?」

「シュウのことだから忘れてると思うけど、今日はシュウの誕生日だよ。シュウの欲しい物が思いつかなかったから代わりに快眠出来る環境を作ってみました」

「そういえば、そうだったな…」

言われて思い出す。今日は俺の誕生日だった。なので名前はプレゼント代わりにこの空間を演出したらしい。嬉しかろう!!とばかりに目をキラキラさせている。

「ご感想は?」

「人間の安眠空間が吸血鬼にも当てはまると思ってるわけ?」

「え。違うの?」

「少なくとも俺には当てはまらない」

「今までの努力を無駄にするような一言…でもほら。タオルケット昼間のうちに干しといたからフワフワだよ!!」

「フワフワ…」

その単語に心惹かれてベッドへ近づき、タオルケットに触ってみる。確かにフワフワしてる。シーツや枕カバーも同じようになっていた。

「これは…褒めてやらなくもない」

「でしょー!!ほらほら、早く寝てみて」

ベッドに横たわると名前がタオルケットを掛けた。柔らかい感触に包まれる。見上げた先には優しく微笑む名前が。まるで子を寝かしつける母のようだ。

「お誕生日おめでとうシュウ。ゆっくりおやすみ」

ふわり、と俺の前髪を撫でて離れていこうとしたから咄嗟に腕を掴んで引き留めた。

「どこに行くの」

「一人のほうが快眠出来るでしょう?」

「勝手に決めんなよ」

ベッドに引きずりこんで頭からタオルケットを被せて押さえつければじたばたと暴れる。離してやると顔を出して目を白黒させている。

「あんたがいなきゃこの空間は完成されないだろう」

タオルケットに潜り込んで名前を抱き締める。いつもなら抵抗するのに今日は大人しい。それどころか自らすり寄ってきた。

「せっかくだから今から寝るけど、起きたらあんたの血を飲ませてくれるんだろ…?」

「シュウが望むなら全部あげるよ」

自分で言っといて恥ずかしくなったのか俺の胸元に顔を埋めた。耳が真っ赤だから隠せてないけど。これも誕生日効果なのか、好きにさてくれるようだ。名前自身がプレゼントといったところか。なら思う存分味わらせてもらおう。ま、今日だけじゃなく365日いつでも捧げてもらうけど。

「こんな名前が見れるなら誕生日も悪くない」

「シュウが喜んでくれるなら嬉しいです」

いつになく素直な名前が可愛くて、無意識のうちにキスをしていた。





愛・マイダーリン










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お誕生日にup出来て良かった…!!何書けばいいかわからないぐらいシュウさんへの愛が迸っております!!(←)とにかく、シュウさんお誕生日おめでとうございます!!大好きです!!



お題、風雅様より
「愛・マイダーリン」使用



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