部屋を間違えたのかと思ったがそんなわけない。念のためもう一度確認したがやっぱ自室だ。勘違いしたのはベットを我が物顔で占領している男のせいである。
「どうしてここにいるの逆巻シュウ」
虚ろな表情をしているシュウはベットに対して横向きに寝ているので足がはみ出していた。途中で力尽きた感がひしひしと伝わってくる。寝間着な上に首にタオルをかけているのでお風呂上りみたいだ…って!!
「うわぁぁぁ!!髪乾かしてないし!!!」
「んー。うるさい…」
身じろぐシュウの髪の毛から水滴が垂れてシーツを濡らしている。シュウの身を案じているわけではない。風邪を引いたとしても自業自得だし、そもそも吸血鬼はそんな柔じゃない。私が心配しているのはベットのほうだ。
「このままじゃ寝れなくなる!!やめてよ!!」
「んぁ」
半分寝てるせいで生返事だ。この男は!!本当に!!世話がかかる!!火事場の馬鹿力を発揮してシュウを起こすがこれ以上は動かせない。非常に不本意だがベットを濡らされたくないのでシュウの髪の毛を乾かすことにした。タオルドライしてからドライヤーをかける。
「どうして私がこんなことを…」
「もっと丁寧にしろよ」
「文句言うな!!」
ある程度乾いたのでドライヤーを切って手櫛で整える。水分を含んでぺったりしていたが髪がふわふわになった。癪だが触り心地がいいのは認めざるをえない。
「ほら、このまま自室に帰って、って!!」
フラッと立ち上がったので帰るのかと思ったらベットに倒れ込んだ。枕に頭を乗せ毛布に潜り込んでいる。これは本格的に寝るつもりだ。
「ちょっと!!送ってくから自分の部屋に戻って!!」
「嫌だ」
今にも寝てしまいそうなシュウを揺さぶっていたら腕を掴まれて引きずり込まれた。しっかりと抱きしめられ、いつの間にか毛布をかぶっている。
「嫌じゃない!!」
「嫌だって言ってるだろう。寒いから暖を取らせろ」
「お風呂入って温まったでしょう」
「もう冷めた」
脛に足の甲が押し付けられる。ひやっとした感覚に肩が跳ねた。シュウの身体は冷たくなっている。抱えたときはそれなりに温かかったのに。押し付けるだけでは物足りなくなったようで、足と足の間に膝を割り入れると絡ませてきた。
「温い…あんた気持ちいい」
「ぶっ!!」
気持ちいいって…何言ってるんだ!!シュウが喋る度に吐息が肌を撫でる。こそばったくて首を窄めるとシュウがくつくつと笑い始めた。
「一々反応するなよ。敏感だなぁ」
「っ!!してない!!」
「ふっ。抱き枕兼ゆたんぽとか、便利だな」
「人をなんだと思って!!」
「だから、抱き枕兼ゆ…どうでもいいや。ほら、もう寝ろ」
まるで子供にでも言い聞かせるような優しい声だった。吃驚していると旋毛に鼻先を押し付けてきた。
「名前、逃げるな、よ………」
ぶつっ、と言葉が切れて代わりに寝息が聞こえてきた………寝てしまった。逃げるなも何も、がっちりホールドされて抜け出せない。結局、私も一緒になって寝るしかないのだ。ため息をひとつ、冷えた身体を抱きしめて瞼を下す。温もりを得ないシュウの身体が私の体温で少しでも温まればいい。そんな風に思いながら眠りについた。
絡めた貴方と私の脚
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お題、 リライト様より
「絡めた君と僕の脚」使用