まっすぐに歩を進める名前を追い、付かず離れずの距離を保つ。道のりは残り半分。順調だったが事態は急変する。名前が進行方向から逸れて脇道に入った。山崎は一瞬戸惑ったが、すぐに彼女を追って裏通りへ入る。そして…

「何をしているのですか。山崎さん」

急停止をかけた。何故なら仁王立ちした名前が道を塞いでいたからだ。どうやら尾行はばれていたらしい。山崎の背中に冷や汗が伝う。

「………」

「土方さんの命令ですね」

言い訳が思いつかずに黙ていたが、言い当られてしまった。昨今、不逞浪士の活動が活発化しており何かと物騒である。重要な書状を持ってい名前が浪士達に囲まれるようなことでもあったら一大事だ。

「もしも時のことがあった場合、一人で対処しきれずに書状を奪われるわけには行きません」

「だったら他の人を使いに遣ればいいものを…」

長々としたため息を吐いている名前の言うことも一理あるが、幕府の、それなりに地位がある人物への書状である。相手に見合う肩書き…つまり副長補佐である名前でなければ成し遂げられない仕事だ。

「この任務は貴方にしか果たせないと副長が判断したものです。あの人が決めたことなら間違いはありません」

「わかってまいす。ですが、秘密裏に護衛をつけなくても言ってくださればいいのに」

ぐちぐち言っているわりには本気で怒ってはいない。わざわざ山崎を使って影から見守らせたのは名前の自尊心を傷つけないように、という土方の配慮だと名前もわかっているからだ。

「お忙しいのに余計な仕事を増やしてしまって申し訳ないです」

「これも隊務の一つですから苗字君が謝ることはありません。それよりも早く終わらせてしまいましょう」

「はい」

本来の任務を遂行するために表通り出ようとする名前を見送る。すると彼女は途中で振り向き行きましょう、と言ったので山崎は面食らう。山崎としては影から名前を守るつもりでいた。

「行かないのですか?」

「俺は隠密に行動しますので先に行ってください」

「今更そんなことしても意味がありません。それに一人でいるより二人で居る方が絡まれにくい」

これまた正論である。しかしそんな堂々としてもいいものか。今までの行動が無意味になる。共に歩いていても問題もないが、それでも悩んでいると名前はさっさと行ってしまった。山崎はさらに逡巡した後、走って角を曲がると名前の隣へ並んだ。

「今日は良い天気ですね」

「そうですね」

「帰りは遠回りして散歩でもしましょうか」

「あまりおそくなると副長に迷惑がかかります」

「少しぐらい大丈夫ですよ。山崎さんが隣にいてくれますし」

それに一緒に怒られてくれるでしょう?と。それもいいかもしれないと思っているあたり自分もこのお使い、もとい身辺警護を随分と楽しんでいるようだ。





スロー・スウィートステップ

(お団子が食べたいです)

(屯所に持ち帰りするならいいです)

(じゃ一緒に食べましょう)

(えぇ)









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夢主がデレた………!!!いや、ツンデレというわけではないのですが、意地っ張りの強情っ張りが売りだったはずなのに(売りって)しかし、山崎さんは割とツンデレぽい気がするので二人してツンツンしてたら話が進まない。ということで夢主に素直になってもらうしかないんだよ。



お題、 リライト様より
「スロー・スウィートステップ」使用



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