たまたま立ちよった酒屋で見つけたのは幻の一品といわれるお酒だった。千景はそれを見つけた瞬間、迷うことなく購入した。思わぬ掘り出し物に上機嫌で帰路を辿っていたが、彼を不愉快にさせる事件が起きている。

「お止めください!!」

「国のために身を粉にしている我ら攘夷志士に酌の一つも出来ぬと申すか!?」

道の中央。女一人に攘夷浪士らしき男三人が怒鳴り散らしていた。赤ら顔であるのは酔っているためと思われる。人垣が出来ているせいで通るに通れず、足止めをくらう。迂回することも考えたがすぐに打ち消した。何故俺がわざわざ遠回りしなければならない。

千景は人の山を突き飛ばし、ごたごたしている集団に近づくと浪士を蹴りとばした。

「な!!何をする貴様!!」

「邪魔だ」

「何だと!?」

「人間ごときが俺を不愉快にさせるとはいい度胸だな」

千景の暴言に紅潮している頬をさらに赤くした浪士達が刀に手をかけた。生憎、丸腰だったが得物がなくても伸すのは簡単である。格の違いを見せつけてやろう、と徳利を持ったまま身構えた。

「そこまでだ」

辺りが俄に騒がしくなったのを不審に思った浪士の一人が振り向こうとした瞬間、後ろから刀が伸びてきた。正確には刃が首元すれすれのところに宛がわれている。浪士よりも一回り小さな身体に浅葱色の羽織を着た男が冷えた眼で浪士を見据えていた。

「貴様は!!」

「新選組だ。逃げ場はない、大人しくしろ」

浪士は背後をとられて動けない状態であり、他の二人はすでに取り押さえられいた。絡まれていた女性は保護されている。浪士の背中に冷や汗が伝う。

「幕府の狗が!!崇高な志を持つ我らを阻めると思うてかっ!!」

「崇高な志を持った人間は昼間から酒をかっ食らって女子に無体を働いたりしない」

「っ!!」

「お前らには色々と聞きたいことがある。屯所まで来てもらおうか」

たいした抵抗もしないまま、浪士は捕縛された。新選組が来たとあって観衆は散り散りになっていく。武士は他の者に指示を出すと成り行きを見守っていた千景の方に振り向いた。千景は目を見開いた。

「(女?)」

浪士の体躯に隠れて全貌が見えなかったが向き合うとすぐにわかった。ただ、中性的な顔立ちであり、袴を穿いているため男と言われても遜色はない。

「お怪我はありませんか?」

「あるわけなかろう。俺が人間ごときに負けるわけがない」

「…そうですか。此度は助力していただきありがとうございます。おかげで無事に助け出すことが出来ました」

「あれは俺自身のためにやったただけのこと。あの女のためではない」

「………それでもあの人が怪我しなかったのは貴方か止めに入ってくださったおかげです」

ありがとうございます、と丁寧に礼を述べる姿を見て千景は目を細めた。大抵の者はこういった物言いをされると不快感を示すのだがこの女はそうではないようで。しかも女の身でありながら刀を振り回しているとは…なかなか面白い。

「(新選組といったか。覚えておこう)」

「副長補佐。少しよろしいですか?」

「どうしました」

「捕縛した浪士ですがいかがいたしますか」

「私と何名かで連れ帰ります。残りは永倉組長と共に見廻りを続けてください」

「わかりました」

隊士と話し終えた武士―――苗字名前は改めて礼を言おうと振り向いたが男はいなくなっていた。

「おう名前!お手柄だったな!きっと土方さんに褒められるぜっ!」

「………」

「おーい、聞いてんのか?」

「人間ごときって、」

「あん?」


あんたは人間じゃないのか。



そんな名前の疑問は一月後に解消されることになる。





「よもやこのようなところで再び会うとはな」

「お前は!!」





邂逅
(少しは楽しませてくれよ)










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ちー様難しいです´`



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