この文は届きはしない。それでもいいと思ってる。結局は自己満足だけど、いいよね。君は呆れながらもお前らしい、って笑ってくれるはず。

今だから明かすけど僕は労咳って診断されてもさほど慌てなかったよ。なんとなく感づいていてたし、元々死ぬことたいして恐怖はなかった。僕に恐れるものがあるとすれば役立たずと捨てられることだけだ。だから、もう一度剣を握りたい一心で嫌いな薬だって欠かさず飲んだし、稽古したいのも我慢してちゃんと療養したんだよ。なのに僕の努力を嘲笑うかのように日に日に身体は言うことをきかなくなって、いつか本当に捨てられるんじゃないかって不安に襲われた。ままならないのに苛々してさ、皆を困らせるようなことばかりしたんだ。

そんな時だったね。匙で掬ったお粥を僕の口に突っ込んで君が怒鳴ったのは。食べるもの食べなきゃ治るものも治らないわ馬鹿者、って。正論なんだけど普通病人に向かってあんな暴言吐くかな。さすがの僕も唖然としたね。でもその後に新選組には総司が必要なんだから、って言ってくれたから僕はこの上なく安心したんだよ。僕の居場所はなくならない。だから帰ろう、必ず帰ろう………帰ろう、って決めてたんだ。今だって諦めてない。でも、万が一駄目だった時のために書き残しておくよ。

ごめんね、戻れなくて。謝るなんてらしくないって言わないでよ。近藤さんと新選組のために、もう一度あの場所で、名前の横で戦いたかった。どこまでも一緒に行きたかった。

それからいい機会だからこれも書いておこうかな。君はさ、男の子にしか見えないって皆から言われてたけど、僕はそうは思わなかったよ。まぁ、僕は君が女の子の格好をしているのを見たことあるからね。それを差し引いても僕には女の子にしか見えなかった。名前は僕の中ではずっと女の子だよ。それは一生変わらないから覚えていてね。



疲れてきたからここまでにしとくよ。僕が戻るまで死んだりしないでよ。それじゃ、また。





戦友であり、初恋の君へ





ぱっ、と振り向く。誰かに呼ばれた気がしたけど誰もいなかった。それでも動けずにいるのは、自分を呼んだ声が懐かしい物だったから。ここにはいない人の名を呟いても届くことがないことを名前は知っている。










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