「…ということがあったわけさ」
「へ…へえ…そうなんですか…」

乱太郎の顔が何だか引き攣っている気がする。伏木蔵の伊作を見る目が何か哀れみを滲ませている気がする。
一年生にこんな表情をされる私たちって何なんだろうか。

「ま、まあそれも昔の話だよ」

とってつけたように伊作が明るい声を出す。

「昔の話っていうか最近の話だけどねえ」

溜息を吐きつつ、私は手元へ視線を戻した。私だけでなく話の方に気を取られて皆いつの間にやら手が止まっていた。それぞれ仕事を再開しながら、「でも」と乱太郎が小さく首を傾げる。

「先輩」
「んー?」
「ひとつ聞いてもいいですか?」
「なーに?」
「結局、雑渡さんは何で先輩を連れ去った…っていうのかな。連れ去ったんですか?」
「ああ、それ?」

後に聞いた話である。父様はしれっとこう言った。

『お前の話す『お友達』がどれほどのものか見てみたかっただけだよ』

「……『だけ』なんですか」
「『だけ』なんだよ。そのお陰で私ら追試だったんだけどね。ははは」
「そうだね、追試だったね僕ら。ははは」

乾いた笑いと共に増した速度で薬草を仕分ける六年二人に、一年生たちはこれ以上何も訊かなかった。
何だこの居たたまれなさ。

「私たち悪くないよね、いさっくん」

じゃあ悪いのは誰だと言う話になるのだが。

「朔」

がし、と伊作に両肩を掴まれた。

「その先は言っちゃ駄目だよ。何か駄目な気がする」

え、いさっくん目が本気なんですが。何だどうした。

「言ったら来る気がするんだ。何ていうか保健委員長の勘が言ってる」
「保険委員長の…?」
「勘、ですか?」

一年生二人はきょとんとしているけれど。

「伊作、それって…まさか、不運委員の勘じゃ…」
「やあ、元気かい」
「あ、父様」

ごめん伊作。何か来た。

「父様」
「ん?」

まあとりあえず。

「手伝ってください」

人手確保と思うことにしよう、うん。


学級委員会委員長の懐古
(と呼ぶには新しい思い出)
(20111203)

「伊作先輩」
「何だい、乱太郎」
「蓮咲寺先輩ってたくましいですよね」
「はは…だって六年だしねえ」
「六年生ってすごいですねえ」
「君たちもなればわかるよ」
「わー…すっごいスリルー」


鹿乃様リクエストで『天泣夢主と組頭の親子関係が判明したときの周りの反応』でした。大変お待たせしまして申し訳ありませんでした。六年生たちの反応はこんな感じでしたがいかがでしょうか?少しでも楽しんでいただければ幸いです。今回は素敵なリクエストありがとうございました。



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