天落・弐



あなたが好きよ。運命の人。


初めて目にした瞬間から、わたしはその人に恋をした。
そう、それは恋。それ以外にふさわしい言葉なんてなかった。
生きる世界が違うって、自分に言い聞かせて、でもどうしてもどうしても諦め切れなくて。

自分でも馬鹿だなって思ったわ。でもわたしは、毎晩毎晩神様に願ったの。
神様神様、いるのならどうかこの願いを叶えてください。神様神様、わたし、『忍たまの世界』に行きたいんです。ねえ神様――。
願って願って願い続けたわ。彼のいない世界なんて何の意味も無い。ここは私の生きる世界じゃないだから――って。
願って願って願い続けて、そうしてわたしの運命は開かれたの。神様はちゃんと存在していて、私の願いを叶えてくれたの。

あの人と同じ世界に私を連れて行ってくれた。もちろん、わたしが神様に愛された存在である証拠に、ちゃんと世界から『愛される』ようにしてくれた。
彼のいるその世界は、わたしの為の世界。わたしと彼の世界。
わたしを愛する世界。

なのに彼にはなかなか会えなくて、やっと逢えたあの瞬間、わたしはこの世界に存在する意味を改めて感じたの!やっと回り逢えた運命の人!
幸せだったの。

――蓮咲寺朔が邪魔するまでは。

やっと出会えたわたしの運命――三郎とこれからたくさん話して、それからずっと一緒にいられるってそう思ったあの時、あの女はわたしの目の前から三郎を連れ去った!
ふざけるんじゃないわよ、なんなのよアンタ。何の権利があって三郎とわたしを引き離すの!?三郎だって困惑した顔してたじゃない!
毒虫が何?そんなものを片付けるのがアンタみたいなモブの仕事でしょう!?あの女のせいで、わたしたちはまた離れ離れになってしまったの。ねえ神様、これはわたしの世界じゃない。なのになんでこんな仕打ちをするの?
そう思ったわ。でもわたしはちゃんと理解したわ。あれは、わたしたちの絆を確かなものにするための試練だったのね?
だってほら、わたしのピンチにあなたは駆けつけてくれたんだもの!

「助けて!三郎!」

わたしはここよ!ここにいるわ!!


広げた腕にあなたをちょうだい
(20120629)

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