『前略、父上さま。 おげんきですか?朔はげんきです。 忍術学園に入学してふたつき、たちました。 毎日いろいろなことをおそわるので、おぼえるのが大変ですが、父様みたいな忍者になるためにがんばりたいです。 あと、学園生活にもなれてきたと思います。 このあいだ、友達ができました。とても元気な子と、あんまりおしゃべりしないけどやさしい子です。 いっしょにバレーをしたり、本を読んだりしています。 もっと仲良くなれたらいいなあと思うので、バレーの練習もがんばります。 それでは、またお手紙します。 朔より。 ついしん。 夏休みにはかえりますね。』 「どうしたんだ?チョーくん」 「チョーくん言わないで下さい高坂さん。あ、いえ、これなんですが…」 「ん?草紙か?」 「組頭が先ほどまで読んでおられたんですけど」 「組頭が?」 「やたら機嫌が良かったから、何を読まれているのかなと思ったんですけど…」 「…なんでそんな疲れた顔してんだよ、お前。…まさか…破廉恥な…?」 「違いますよ!…いやむしろそっちの方がマシだったかもしれません」 「は?どら、見せてみろよ」 「どうぞ」 「んー?なになに?……………」 「……」 「……なあこれって……」 「……ええ、そうなんですよ。はは…」 「どうした?二人揃って」 「あ、小頭」 「お疲れ様です。いえ、ちょっとこれを見てしまいまして……」 「ん?何だ?……。……こ、これは……」 「はい、朔からの文をまとめた冊子です」 「其の一、とか書いてあるんだが……?」 「おそらく一年生編かと思われます……」 「一年生編てことは二年生編とか三年生編もあるんですかね」 「そりゃそうでしょう、高坂先輩。だってあの組頭ですよ?わざわざ冊子にまとめて装丁までしてあるんなら、一通たりとも漏れなく取ってあるに決まってるじゃないですか!」 「あー、まあそりゃそうだわなー。普通」 「でしょう?普通」 「いや、普通娘からの手紙を取っておくだけならまだしも手ずから冊子にしないだろう」 「でも小頭、あの組頭ですよ?」 「……みなまで言うな高坂」 「朔のこと大ッ好きですもんね、組頭」 「目の中に入れても痛くないっていうか、あれこそ溺愛っていうんだなって俺思いましたもん…」 「ていうか、朔が城ひとつ落としてとかおねだりしたら平然とやってのけそうじゃないですか?」 「なまじ出来る実力があるから怖いよなあ」 「アイツ、嫁に行けるのか?」 「いや無理でしょう。婿を貰うとかそんな方向じゃないですか?」 「うわー、俺その婿に同情するわー。だって婿になる前から婿いびりされること決定じゃねえ?」 「そりゃ仕方ないですよ。だって朔を嫁にするんですから」 「……お前らなあ」 「えー。でも小頭だってそう思うでしょう?」 「否定できないから辛いんじゃないか…」 「…あれ。あの、高坂先輩」 「どうした?」 「ここなんですけど」 「ここ?何?『同封したお手紙は、尊くんと陣左兄にわたしてください』…?」 「俺、朔からの手紙なんて組頭から貰ったことない気がするんですけど…。先輩あります?」 「……いや」 ((……握りつぶしたなあのひと)) 「おや、三人揃って何してるんだい?」 「「「ッ!!組頭!!」」」 「…何その反応。ひとを化物みたいに。まあいいけど。ところでさ、この辺で冊子を見なかったかい?」 「あ、ああこれ!置き忘れておられましたよ!」 「おやそうかい。ありがとう」 「あのう、組頭?」 「何だ、陣左?」 「つかぬことを伺いますが、それを常に持ち歩かれていたりします、か?」 「常にじゃないよ」 「そ、そうですよねー」 「あの子に会いに行く時は持っていかないし」 「……ですよね」 「本人ですもんね」 「必要ないですよね」 「持ってるのはせいぜい仕事のときくらいだよ」 「「「……」」」 「お前たちなんでそんな疲れてるんだい」 「いえ、お気になさらずに」 「思ってませんから」 「愛が重いなんて決して」 「は?」 『前略、父上様。 この間お会いした時にはお元気そうでしたがいかがお過ごしでしょうか。私は元気です。 留三郎より、その折の被害に対する苦情が私のところへ寄せられています。主に修繕に対する手間と費用に関して。彼らと遊ばれるのは結構ですが、二次災害的な部分を考慮していただけると、非常に喜ばしいかと思います。 加えて、先日も申し上げましたが、仕事をしてくださいね。くれぐれも陣内さんを筆頭に皆様に迷惑を掛けられませんよう。 最後になりましたが、お土産にいただいた塩大福はとても美味しかったです。ありがとうございました。 お体には気をつけて、またお手紙致します。 朔より。 追伸。 夏休みには帰ります。』 ‐‐‐ 五万打企画で『タソガレドキとの日常』話。 五万打ありがとうございました。 |