一日目。



今日は保健室の当番だったので、保健室へ行ったら蓮咲寺先輩がいました。
日誌当番になったけど、いきなり保健室当番と被っていたので「さっそく不運!」ときりちゃんに言われましたが、今日の私は不運じゃない気がします。

蓮咲寺先輩は、たまに保健室に来られます。
怪我や病気じゃなくて、珍しい薬草を持ってきてくれます。
蓮咲寺先輩はお母さんに教えてもらったそうで、保健委員じゃないけれど伊作先輩みたいに薬には詳しいです。
どうして保健委員じゃないんですかと前に伊作先輩に聞いたら「不運じゃないからねえ」と言われました。伊作先輩は何だか遠いところを見つめていました。
今日持ってきてくれた薬草も、十年に一度生えるかどうかという珍種だそうです。
伊作先輩は「相変わらずよくもまあこんなの見つけてくるねえ」とニコニコ笑っていました。
蓮咲寺先輩は「いやー、ほんと偶然て怖いよねえ」とニコニコ笑っていました。
二人ともずっとニコニコ笑っていましたが、その笑顔がまったく動かないのでちょっと怖かったです。
あと蓮咲寺先輩は珍しい薬草を持ってきてくれる時、どうしていつもあんなに泥だらけなのか私は少し不思議です。

今日は日誌をつけるので、思い切って先輩に理由を聞いてみようと思いましたが、絶妙のタイミングで七松先輩が「いさっくーん!ちょっとコイツら見てくれー!」と蹴破った障子の下敷きになった伊作先輩に巻き込まれてそれどころじゃありませんでした。
やっぱり今日の私も不運でした。

しばらく気絶していたのでその間の事はわかりませんが、目が覚めると保健室には伊作先輩と蓮咲寺先輩しかいなくて、二人はお茶を飲みながら溜息をついていました。
何だかちょっとだけうちの父ちゃんと母ちゃんみたいだな、と思ってしまいました。
先輩たちは、私に「ごめんよ、あのお馬鹿が」と謝ってくれました。何だか私が申し訳なくなりました。
その後先輩たちがおまんじゅうをくれたので、三人で食べました。
蓮咲寺先輩はにこにこ笑いながら私の頭を撫でてくれました。何だかいい匂いがしました。


蓮咲寺先輩は伊作先輩みたいに薬にくわしくて、時々ちょっと不思議で、でもとっても優しいです。

乱太郎


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