血の臭いと呼ぶには澱みすぎていた。
死臭の立ち込める焼け野が原には、いくつもの骸が転がっている。
ぼんやりとそこに立ち尽くす彼女に、何と言ってやることが正しかったのだろうか。

「姫」

彼の声に振り返った娘は、視線をさ迷わせ、ややあってその目で彼を捉えた。

「 」

椿の花に、似ている。
白い顏に映えた紅の唇が紡いだ言葉は、何だったのだろうか。
その答えを、彼は未だ探している。


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