どうどうめぐり

※学パロ

 一旦整理してみよう。
 何を隠そう俺とアオイのことだ。

 まず、彼女とは物心ついた時から一緒だ。
 あれは昔からぼんやりしていて、周りと少しだけ感覚がズレているものだから危なっかしくてしょうがなかった。幼馴染、なんて聞こえはいいがこれはもうあれだ、兄だ。同い年だけれど。
 意地悪されてもぽやん、と笑う彼女は度を超えた悪戯でさえもニコニコしてるものだから代わりにいつも俺が怒るし、容姿だけはやたらめったら良いから寄ってくる変なやつを追っ払ってもやってる(これに関しては叔父さんの方が何倍も恐ろしい)

 いやいやいやなんで俺はこいつの事ばっかりいつも振り回されてんだ?って疑問は毎度の如く「はーくんは優しいよねぇ、ありがとう」の一言で吹き飛んでいる。単純じゃないぞ。見返りを求めてない分、俺が大人なんだ・・多分。

 そんなだからいつまでたってもアオイは「はーくん」とあいもかわらず俺の後ろにくっついて回る。いや、正確に言うと回ってた、の過去形だ。

 話を次の段階に進めよう。
 高校に入学したあのアオイが生徒会なるものに立候補して入ったのだ。今まで何をするにも「はーくんと一緒でいい」とか「はーくんがやりたいやつ」だったアオイが自分からやりたいといいだしたのだ。昔から続いていたいつも二人でいる、ということがその日を境に少しずつ消滅していった。

 いやいやいや、別にこれはいいんだ。
 叔母さんなんか「あの子がやっと仲権くん離れできたのねぇ」なんて言ってたし、やっとあいつもしっかりしてきたって証拠だ。そもそも高校生にもなって幼馴染だから一緒、なんてガキみたいじゃん。そうだ、これが普通なんだ。つーか、その理由も「うーん、なんとなく」とか言ったアオイに成長は見られないんじゃないかって議論はこの話の主旨とズレてくるから置いておく。

 じゃあ問題は何かって部分に差し掛かる。
 あれだけ何されてもぽわん、としてたアオイがたった今隣で耳まで真っ赤にして、揶揄うだけ揶揄って去って行った相手の背中をなんとも言えないように見つめているーーその表情は俺が知らない表情だった。
 そんな些細なことがあまりにも衝撃でどうしようもない焦りが生まれて、そんな焦りに戸惑って。
 あれ? そういえばアオイの中で兄みたいな幼馴染なら、俺の中でのアオイは? なんて疑問が浮かんだ。

 「生徒会のやつ? っつーか同い年かよ、でっけぇな」
 「はーくんが小さいだけだよ」
 「・・・・おい」

 交わす言葉こそ普段どおりなのに空気はぎこちない。いや、そう思ってるの俺だけかもしれないけど。

 「・・・・・・賈充くんはいつも意地悪ばっかする」

 おいおいおいおい、その表情も俺、知らねぇんだけど。っていうか、お前いままでそんなこと気にしたこともなかったじゃん。

 っつーか、賈充ってやつもヤバいんじゃないか。知らないだろ、こいつ自身はぽやぽやしてるけど、それに付け入ると叔父さんがすっげぇ怖いんだぞ、あのただでさえおっかねぇ顔(親父が言ってた)がさらにおっかねぇことになるんだぞ、アオイ絡みとなると容赦ないんだって。
 アオイもアオイでさ、なんでそんな顔、もっといつもみたいにヘラヘラしろよ。そんなんじゃ、まるでさ、

 「はーくん? どうしたの? 難しい顔してる」

 いつの間にか少し先にいたアオイは、いつもの抜けた顔に戻っている。俺は慌ててその隣に戻る。

 「いーや、なんでもない」
 「そう?」

 いやいやいや、なんでもなくないって。
 あれだ、つまり俺が思ったのは、なんでいつも近くにいた俺じゃなくて、そんな顔をするのがぽっと出のあいつなんだよってことなんだ、多分。
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