学パロでサスケが一人暮らしするイタチの家に遊びに行く話。 蝉の声があちこちから響き渡る暑い夏が続く。ただでさえ暑いことに苛々しているサスケは、余計に眉間に皺を作り歯軋りをしている。今、サスケがいる場所は蝉よりも耳障りなものが響き渡っていた。 「…という長州藩士が御殿山の英公使館を焼き打ちして…」 学校トップの成績を誇るサスケにとってこんな補講は大したことはない。だからといって別に聞きたくない訳ではない。いつもならばそうであるが、今日は違う。 「…がその後に一人火薬が湿っていないかの確認をするために戻るが、丁度その時に火薬が爆発した」 (早く終わってくれ…!) ずっとこの日をまだかまだかと楽しみにしていた。 両親にも何度か頼んだが兄も忙しいし、学校もあるからとずっと反対されていた。 そしてやっと夏休みなら良いと許可が下りた。サスケは兄にすぐにでも会いたかったから、夏休みに入る学校最終日にイタチに泊まりに行きたいと連絡した。イタチも承諾して、終わる時間辺りに迎えに行くと連絡がきたのが一昨日。 時計の長針が4を指すまであと20分。サスケは窓から校門をちらりと見る。しかし見えるのは体育館とグラウンド。特に校門を隠すように建つ体育館を憎々しげに見つめることしか今のサスケには出来なかった。 ふと前に視線をやると前の席のナルトがこちらを見てニヤニヤしている。どうやら一部始終見ていたに違いない。今度は端ではなく中央に席をコイツは移してくれないかと本気で思った。 すぐにナルトが椅子を近づけて、サスケに話しかけてきた。 「今日なんだろ?」 その言葉にギクリとする。ナルトはサスケの反応で今日何があるかすぐに理解した。予想通りの反応にますます調子に乗るナルトは笑みを深いものにする。 「で、今度はどうするって?」 「…校門まで迎えにくるらしい」 サスケが度々外をチラチラ見るときは兄に会う証である。そして毎度毎度その兄はビックリするような行動をとる。前は教室まで 仕方なく答えるとニィと笑っておちょくるようにしつこく話しかけてくる。次第に夢中になってきて声を少し大きいものにしていく。先生が近づいてくる見えたので、ナルトの話を無視して教科書を見たり板書に集中した。 こんなことで居残りになんてなるわけにはいかない。 「ナルト……」 「ゲッ、イルカ先生!?」 そこでチャイムが鳴った。 なかなか良いタイミングだと心中で思いながら終了を告げる先生の言葉を待つ。 既に机には鞄一つという手際の良さ。 「ではナルト以外は帰ってよし。明日から夏休みだが、夏休みもしっかり勉強するようにな。解散!」 ナルトの「えーーー!?」という大きな叫び声が教室に響く。 「先生っ!サスケだって話してたってばよ!サスケもだろ!?」 「オレはお前の話に付き合わされてただけだ。じゃあな」 「あーーー!コラッ!サスケェェー!!」 背にナルトの叫びを聞きながら振り返ることなくサスケは校門を目指す。 携帯を見ると先程送った返事が来ていた。ただ一言「待ってる」だけだったがそれだけでも心が跳ね上がるように嬉しかった。 靴箱に入る靴を引き出すと同時に大量のラブレターが床に散らばる。それに目もくれずサスケは校門を目指した。 校門に着くと、すぐに懐かしい車を見つける。車の横に立っ人影を見た瞬間、サスケは獲物を見つけたように一直線に目指して駆けた。 「兄貴っ!」 「サスケ、早かったな」 飛びつく弟に少しよろめくも、優しく受け止める。 「別に。学校がすぐ終わっただけだ」 一番に教室を出て、ここまで駆けてきたことなどは伏せる。 「疲れただろ。今から行くか」 「あぁ」 隣の助手席に座る。ふと、後ろを見ると見慣れた黒い鞄があった。サスケが昨日詰めた荷物だ。 「家に行って取ってきたのか」 「あぁ、そっちの方が早いと思ってな。わざわざサスケが行くのも大変だろ」 ということならこのまま兄の家に直行だな、と頭で予定を整理する。蒸し暑い中、歩いて帰る連中を見て少し優越感に浸る。 普段の自分も同様であるが、既にサスケはそのことを忘れている。 次→ 真理様からのお題「夏休み」です。初の学パロなので少し判りにくいですがサスケは高校生です。 兄さんが何をしているかは次回書きます。 真理様、ありがとうございました! 2011/8/15 ←top |