04

サクラが出ていった後もイタチは茫然と扉の方を見ていた。サクラの様子もいつもとは違っていた。

(何かあったのか…)

考えてみるも何も思い付かない。それよりも自分が今ここにいるということは、サスケはどうしているのかが気にかかる。

「イタチの兄ちゃん!」

勢いよく扉から入ってきたナルトが嬉しそうに紙袋をイタチに差し出す。

「甘味処で買ってきたぜ!兄ちゃんの好きな三色団子。お見舞いだってばよ!」

「ありがとう、ナルト君」

好物の団子も今の状態なら食べられないから早めに退院しないとな、と笑いながら思った。

「でもどうしてここが?」

さりげなく聞き出すために遠回しに問い掛ける。ナルトがいつ自分が入院していることを知ったかが判れば、何があったか自ずとみえてくる気がした。

「サクラちゃんが言ってくれてよ、それでサスケと一緒に見舞おうと思ってさ!」

へへへ、と笑うナルトとは対象にイタチは思考が停止した。一緒に"見舞う"というのはどういうことだろうか。ここにはナルトしか居ない。ならば答えは一つだ。イタチは恐る恐るその答えを発した。

「サスケも…入院しているのか?」

「オウ、そうだってばよ!」

やはりそうだ。サクラがぎこちなかったのも理解できた。しかし昔の修行の場にいて、何故サスケが入院する羽目になったのだろう。病のせいで気を失ってしまい、何があったかは全く記憶がない。

(もしやオレのせいでサスケが…)

あそこは森だから敵襲がないとは言い難い。いくら里内だからといっても、自分の身のことを考えれば里の者であっても襲撃する可能性はある。それをサスケが身を呈して応戦して手傷を負ったと考えれば不思議ではない。
そうならば…サスケを傷付けたのは自分ではないか。

「…兄ちゃん?」

ナルトの声で我に返る。いつの間にか手を白くなる程握りしめていた。不安げなナルトにいつものように何でもないよ、と微笑むと安堵したのか笑顔を返した。

「そういや今からサスケの病室行くけど、兄ちゃんも行けるようなら来るか?」

サスケへの見舞い品と思われる紙袋をこちらに見せる。ナルトの優しい心遣いに感謝しながら笑顔で答えた。

「あぁ、行く」

サスケの病室はイタチの病室の丁度真上にあった。どうせなら一緒にしてもらえば良かったのだが、自分の病のことがあるからだろう。そう思えばやはり別室にしてくれて良かったと思った。

「サスケー入るぜ!」

相手の返事も待たずにずけずけと入っていくナルトに一足遅れて入ろうとするが、二人で話したいこともあるのではと踏み止まる。病室の扉から様子を伺う。

「一言言う前に開けるんじゃねぇよ、このウスラトンカチ」

「何だよー折角見舞いに来てやったってのにその言い方はないだろ!」

サスケは起きていた。ここから様子を見るに元気そうだ。サクラの手当が良かったのか傷も見当たらない。それを確認してイタチは安堵した。

「そうそう、見舞いの品持ってきたってばよ!」

そう言って紙袋から取り出したのはイタチと同じ三色団子。イタチがあ、と思ったときには遅かった。既にサスケがナルトの胸倉を掴んでいた。

「いい加減にしろよ…甘いモン駄目だっつっただろうが」

「で、でも兄ちゃんは喜んでくれたぜ?」

サスケの動きがピタリと止まる。力が弱まったのを見てすぐさまナルトがサスケから離れた。荒い息はしているけどもサスケも殺意があったわけじゃないので大したことはない。

「…兄ちゃんだと?」

「ハァ?ほら、そこの…ってイタチの兄ちゃんってば、何でそんなとこいるんだってばよ」

やっと二人が気付いたなと蚊帳の外にされながらも何故か楽しい気分になる。こんなにも微笑ましいやり取りが出来る仲間がいることの大切さをイタチは知っているからだ。
だがそんな気分も束の間のこと。まるで晴れ渡っていた空が、いきなり暗雲に覆われるかのように。そしてその曇となるものはサスケの一言だった。


「…誰だ……?」

「ハァ!?お前何言ってんだ?自分の兄ちゃんだろっ!」

いつものサスケと何か違うと感じながら、黙って様子を見る。目を見開いてこちらを見るサスケに胸が痛む。その目は先程ナルトに向けていたものとは明らか別物であった。

「いや、知らねぇ」

「お前……何言ってんだよ…!」

―あぁ、そうか。
不思議とイタチはすんなりと受け入れられた。むしろ喜ばしい気さえした。自分を知らないサスケがいることに。そう思えばすぐにサスケに確かめたいことができた。
ナルトが拳を握る。震える拳は怒りからであることもナルト自身気付いていた。だがそれをサスケに当てる前にイタチが制止の言葉を発したので、すんでのところで動きをとめた。

「ナルト君…少しだけ彼と話がしたい」

既にイタチは初対面としてサスケに接する気でいることに複雑な気分になる。それでも「分かった」と了承の意を述べてサスケから離れた。
当のサスケにとっては何故ナルトが殴りかかってきたのか、初対面のコイツは誰で何の話があるのかさっぱりだった。そんなサスケの疑問を解くようにイタチが口を開いた。

「初めまして、サスケ君。オレの名前はイタチだ。ナルト君の知り合いで少し君に聞きたいことがある」

先のナルトの兄とか言う単語には全く関わりねぇのか、とナルトに視線を向けるも、苦々しい面持ちでいるナルトの視界に入っていない。サスケは小さく溜息をつき、イタチという者に向き直る。

「分かった。それで何の話だ?」

「自分の思うままに話してくれ。…家族のことだ」

ピクリとサスケの表情が強張る。辛い記憶であることには変わりはないが、聞かなければならない。


「……両親とオレ一人。だが」

「サスケッ!お前ってば…!!」

騒ぐナルトに目で制止する。ナルトはすぐにピタリと止めるも、怒りを堪えている。それを見てイタチは静かな声で続きを促した。

「続けて」

「…何でお前に話さなきゃならない?」

今更だが湧いた疑問をぶつける。ナルトが邪魔してこなければ危うくペースに乗せられていた。

「初対面の奴に話すわけないだろ。一族のことを探る気だったのか?」

途端怒りが抑えられなかったナルトがサスケを殴った。サスケはいきなりのナルトの行動に対応できず、防ぐことさえしなかった。

「ナルト君!」

静かな怒りを込めた声が響く。しかしナルトは今まで堪えていた怒りを爆発させるように反発する。

「兄ちゃんはそれでいいのかよ!サスケにあんなこと言われ…」

イタチがナルトの髪を撫でる。
ふとナルトがその場で眠りに落ちた。これが幻術だとしたら、かなり幻術に長けているだろう。
写輪眼を発動させて警戒されながらも、微笑んでイタチはサスケに問い掛けた。





















かっなり中途半端ですが、次が転ですのでここで切らせていただきます。
ナルトがサスケより兄さんの部屋を訪れたのは、兄さんに会いたかったから(笑)ほんと私の書くナルトはどこまでも単純です。何だか第一部のナルトのようだw

2011/7/6

重要な「転」の部分なので少し長めに書きました。(言い訳)
指一本で幻術なら、普段の動作もありかなーなんて。
ちなみに一瞬だけ写輪眼なりました。すぐに戻したからサスケは気付いてないよっていう(笑)

2011/7/17

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