03

イタチは目を覚ました。
いつもと違う天井が一番に目に入る。辺りを見回すと白い壁、白いシーツ、そしてこの数々の機具。ここは―

(病院…?)

しかし何故病院に居るのだろう。考えられるとすれば、サスケが運んだということだろうが、サスケには家に薬があることは伝えている。わざわざ病院に来る必要もない筈だ。
だが吐血は治まったとはいえ、まだ苦しさは残っている。薬を飲んでいないことは明白だ。

それらの思考はそこで終わった。扉を開けてサクラが入ってきたからだ。

「…サクラ…」

「え…あ、イ、イタチさん!」

起きていたことがかなり驚きだったらしい。持っていた盆を落としかけた。そこまで動揺しなくても、と微笑ましい気持ちで眺める。

「具合の方はどうですか?」

サクラが寝台の隣の椅子に腰掛ける。イタチの具合は運ばれてきた時よりかは大分とマシなように見えた。

「あぁ、大丈夫だ」

察し通りだったことに安堵して息を吐いた。無理をしている訳ではなさそうだったからだ。だが、本当にそうかと問われれば困る。イタチから表情を読み取ることは難しい。弟であるサスケならば、と思うが今はそうは言ってられない。

「それは…?」

イタチがサクラの盆に乗っている器に視線を向ける。器には赤く長いものが何重にも重なって入っている。
サクラがああと思い出したように答える。

「リンゴの皮です。患者さんに剥いてあげたんです」

「サクラは優しいな」

笑顔にか言葉にか定かではないが、サクラは顔が赤くなるのを感じた。そんな状態でこのまま此処に居ることは気が引けた。

「イ、イタチさんの分もすぐに持ってきますから!」

言い訳というか何と言うかの台詞を早口で言って、そのまま部屋を出た。背中でイタチの「ありがとう」を聞いたが、遮断するように病室の扉を閉めた。





「…ハァ」

閉めた扉にもたれ掛かる。イタチの側に緊張で居られないのもあるが、もう一つ理由があった。
聡いイタチの前で視線を逸らすだけでも気づかれてしまう可能性がある。まさか起きてるとは思わなかった。少し様子を見る程度にするつもりだったのに。

サクラは盆の器に視線を落とす。確かに患者ではあるがイタチには会わせることはしてはならない。幸い、イタチの口からその者の名は出ることはなかったが、いつ出てもおかしくない状況であることは間違いない。

「まさか…サスケ君が…」

何かの間違いであると思いたい。だが先程リンゴを剥きに行ったときに尋ねるも、冗談のようには見えなかった。サスケ自身、冗談を言うような性格ではないが。

(調べなきゃ)

とにかく今は図書室に行かなければならない。サスケの身に起きてしまった不可解な現象の記憶喪失について。





















最近この長編を書くのが楽しいです(^O^)
次はどうしようとかそんなこと色々と考えてますが、まだ結末は決めてません。
大分と長くなる予定なのでゆっくり決めます。
次はイタチ視点になります

2011/7/2

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