おとはな

団子屋の看板娘視点のお話。
兄弟は名前は出ませんが登場します。



からん、ころん

下駄の音を鳴らしながらいつものように歩く。

―昼下がりの晴れた日。

いつものように開いた甘味処の店にその人はやってきた。黒い着物は白い肌を映えさせ、長い髪は赤の結物で束ねているが風になびくそれは絹のよう。

「いらっしゃいませ」

ニコリと笑いながら挨拶する。客に対しては当然の振る舞いであるが、みとれてしまう程の美しさに少し緊張する。
しかし本人にとってはそんなことはまるで他人事のように無関心。
誰か添い人でも居るのではないかと思うが一人で来ているし、誰かを待つ風体もない。

それどころか、席に着いて湯のみを一口つけると品書きも見ずに頼みだす。
しかしそれがまた

「団子20皿」

といったものである。1皿に3本も乗っていることを知っているのだろうか。
もしかしたら誰かと待ち合わせをしているのだろうか。ならばその人の分ということで納得がいく。
そこまで考えながらも団子を乗せた皿を例の人のところへと持っていく。

「お待たせしました」

いくつも並べられた皿には団子が乗っている。
微笑みながら礼を言う客はいるものの、こんなに穏やかで優しげなものは今までに見たことがない。全身が熱を持ったように熱くなるのを感じながら奥に下がって見つめる。
遠い位置からでもやはり美しさは変わらず、串を持つところから口に団子を含むまでの仕草に感嘆を漏らしてしまう。

ふいに扉が開く。
ガラガラと無造作に開かれた扉の音にはっと我に返り、慌てて挨拶しようとする。

「いらっしゃ「やっぱりここだったか」

挨拶も気に止める様子もなく入ってきたその人はつかつかと例の人に歩み寄る。
目つきはするどいがどことなく例の人に似ている容姿。格好良いという人はきっと後を立たないだろう。
やはり待ち合わせをしていたんだと納得して二人の会話を盗み聞き。

「いい加減にしろよ。昨日も喰っただろ」

「一日に必ず甘味をとらないとな…お前も食べるか?」

そして皿をその人に差し出す。だが表情はかなり嫌がっている。まるでおぞましいものでも見るかのように。

「…いらねぇよ」

「…ハハ、やっぱりか」

予想通りの反応だったらしく、自分の元に下げて一本ずつ食べていく。
今更ながらそれ以外の皿には串だけになっていることに気付く。

「…よく喰えるよな」

その独り言には自分さえも同感した。多くの客はいくら甘味好きとはいえこんなにも頼む人はいない…でも一度だけ来た女性の試験官が頼んでいたっけ。

「ごちそうさまでした」

もう食べたのかと思ったら既に格好良い人に引っ張られて外に出るときだった。

「さっさと修業に付き合ってくれよ、兄貴」

「分かったからそんなに引っ張るな」

兄弟だったのかと気付く頃にはもういない。
けれど来たときから出ていくまでの一連は本当に仲が良いと感ぜずにはいられない。

「…ありがとうございました」

言いそびれた言葉を呟いて串だけになった皿を盆に乗せる。
またあの二人が来てくれることを祈って。




















夢小説にも捉えられそうな出来栄え。
木ノ葉もうちはも平和だったらいいのになーという妄想。

2011/5/14

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