依存

アンケートで多かったサスイタヤンデレ話です。
「兄さんにはオレしかいないよね」なサスケが書きたかったお話。


どんよりとした灰色の空がのしかかってくるのをイタチは縁側から眺めていた。
白い空に覆われ遠くの山々はすがたを消し、中心街の喧騒も無音に等しく、この空間だけが存在しているような感覚に陥る。
家にはイタチ一人のみ。幸か不幸か、周囲は空家の家々が寂しげに立ち並ぶだけだ。
サスケが任務の今――今ならまだ間に合う。考えが頭をよぎるも、思考は素通りしていくだけで動くことができない、いつもの繰り返し。
空の白みのせいで太陽の居場所がつかめないが、時計が昼頃を唄う。
そして外内の境を破る音が響く。

ただいまの声もなく近づいてくる足音。イタチは鼓動が早くなるのを感じた。
今日も失敗。いつになっても成功することはない脱走を試みては弟の帰宅を安堵してしまう。

「兄さん、やっぱりここか」

探すこともせずまっすぐに縁側へと現れたサスケは高低のない声で言う。
何を考えているのか読めない。表情を出さないまま慣れた手つきでイタチの前髪に触れる。
逃れたい意識の反面、サスケの体温を心地よいと感じてしまう。この矛盾した感情が毎日イタチの心を蝕んでいく。

「なあ、オレの気持ちに答えてくれよ」

じっと見つめるサスケの視線に耐え切れずに目を伏せると、視界を遮るようにサスケがイタチと唇を重ねた。
このままではいけないと理性が危険信号を出す。従うように素早くサスケの肩を突き放すが、サスケはにたりと笑みを浮かべて笑う。

「兄さん」

動じることなくサスケはまたイタチと距離を詰めていく。これ以上の交わりを恐ろしく思い、イタチは後ろへと退いていく。
ミシリと軋む床が距離がないことを伝える。壁へと追い詰めた途端、一気にサスケが顔を近づけて耳元で囁く。

「兄さんはオレがいなきゃ生きていけないんだ」

脳に響く声をかき消そうと頭を抱えてうずくまる。
そんなイタチの姿を見ながら口角をより吊り上げる様は悪魔そのものだ。
イタチは唇を噛み締めた。実をいえばサスケの言うとおりだ。
それでもイタチは首を振り、必死に抵抗した。肯定してしまえばサスケが自分に依存してしまう。絶対に認めるわけにはいかない。
想定内だとでも言うようにサスケはクナイを取り出し、さっと自分の手首を切りつけた。線を引いて鮮血が溢れ出る。

「な、何してるんだ!!」
「兄さんがまだオレの気持ちを理解してくれないようだから」

今回は何が何でも分からせてやる、続けてサスケは自分の首へとクナイを差し向けた。

「兄さん、オレに縋れよ。オレを求めろ」

クナイをさらに首に近づけ、切っ先を首に押し当てる。血が首筋を辿って垂れる。
本気だ、イタチはサスケの覚悟の恐ろしさに体が硬くなるのを感じた。
縋ってしまえば互いに依存していつか壊れてしまうのは目に見えている。
互いが求め合いすぎている。だからこそ距離をおかねばならない。イタチは今になってここから逃げなかったことを心底悔やんだ。

「やめろ…サスケ、こんなことをして何になる…!」
「兄さんを手に入れる。そのためならこんな命どうなったっていい」
「馬鹿なことを言うな!自分の命をなんだと思っている」
「己を犠牲にしてきたアンタが言えた義理かよ」

声につまるイタチの目線に合わせるようにサスケはストンと腰を下ろす。視線が同じになると喉に流れる血がはっきりと見え、イタチは目を逸らした。

「さあ、兄さん。言ってみろよ」

誘惑するように今までとは違う優しい声音にイタチの心が揺らぐ。
ためらいがちのイタチだったが、喉に刺さるクナイに目が行き、サスケを失いたくないという一心が突き動かす。
ゆっくりとまどろっこしい手つきでイタチはサスケの空いた手を取った。

「お前が……いないと…生きていけない」
「そうだ。それでいいんだ、兄さん」

サスケはクナイを放り出して両手でイタチを抱きしめた。
手に入れたという幸福感と支配感で満たされているサスケにはイタチの考えなど読み取る余裕などないに等しかった。






















今日で大晦日!
全然更新のない中、こんなものが仕上がりました。
今年もありがとうございました!来年もまたヤンデレやほのぼのなどいろいろ弟兄いろいろ仲睦まじいもの書いていけたらと思ってます!
そしてこの話いつか続き書きたい。

2012/12/31

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