他知

「遅かったな」
「ハハ、ちっと遠くまで行っちまって…道に迷っちまった」

サスケは蝋燭の明かりで机に向かい書物を見ている。すでに布団が敷いてあるのは、いつでも横になれるためだろう。まさか自分の分まで敷いてくれるとは思わなかった。
ナルトはすぐさま寝転がる。布団が自分の重さで沈むのを感じると心も安らぎを覚える。

「晩飯は食ったのか?」
「ああ、ここの親切な女将が出してくれた」
「そっかあ…」

日も落ちた帰り道に寄った屋台でつまんだ程度の自分の晩飯のことを考えればサスケと行動を共にすれば良かったと後悔する。
だが、そうすればあの人とも会うことはなかったのだろう。未だに背に流れる長い黒髪ははっきりと覚えている。そしてあの儚げな目も。
寝転びながらサスケを見ると真剣に書物を読んでいる。熱心なやつだなあ、と思いながら見える横顔と髪を見ていると、あの人と面影が重なった。

「なんだよ」

視線に気づいたサスケが横目でナルトを見やる。
ナルトは一瞬驚き肩を震わせたあと、しどろもどろに答える。

「え、あ、いや…その、街で会った人となんとなく似ててさ…」
「は?オレが?お前とは会ってねえよ」
「いや…そうじゃなくてさ……」

ナルトが視線をそらしたため、サスケも書物に視線を戻す。ぽつぽつと街の出来事が鮮明に蘇ってくる。

「すげー綺麗な人だったんだ。人に買われてたけどそんな風には見えなくてさ…」

よくわからないナルトの話を耳で流しながらサスケは墨を摺る。

「髪の色とか伏せた切れ長の目とか結構お前に似てるような気してさ…いや、お前みたいに短くなかったけどな」
「…それで?そいつを買ったのか?」
「いやいや、もういたみたいでよ!オレってばちょっと出来心で逃げだしちまったけど、お節介だったみたいでさ」

ぽつぽつと話す言葉は意味が理解しにくい。
ナルト自身が整理しようとしているようだった。

「その人は道で偶然会ったのか?」
「あ!そうそう!巾着!!オレってば落としちまって…」

流す程度に聞いていたサスケはそれを聞いていきり立った。筆を置き、ナルトの胸ぐらをつかむ勢いで迫ってくる。

「おい!落としたのかよ、何してんだウスラトンカチ!!」
「聞けよ!その人が拾ってくれたんだって」
「でも何枚か確実に盗られてるだろ。確認しなきゃならねえ」

どうせしてない、というサスケの読みは当たっていた。巾着をひっくり返して数を数え始める。
ナルトはそんなことしなくても盗られてない、とぶつぶつ言いながら布団に寝転がる。

「…お前が使った分しか減ってない」
「だろ?オレの言った通りじゃねえか」

おかしい。この大金あれば身売りなどしなくて済むはずなのに。進んで身売りがしたい、などはないはずだ。

「その巾着さ、なんだってばよ」
「…なんでそんなこと聞くんだ」
「だってそいつ、どっちかってーと、巾着の方に驚いてたぜ」

一つ心臓が大きく脈打つのを感じ、身体が熱くなっていく。

「どうした?サスケ」
「ナルト、そいつと会った場所明日連れてってくれ」
「は?なんだよ、いきなり」
「この巾着…オレの兄貴が使ってたものなんだ」

ナルトはサスケが言わんとしていることが読みこめ、唾を飲み込む。

「兄貴が……この街にいる」





行灯の灯をぼんやりと見つめながらイタチはもの思いに耽る。
隣の男は気持ちよさそうにいびきをかきながら寝息をたてている。未だ消えぬ身体の痛みを他人事のように感じながら考えることは今日のこと。あの巾着の紋は見間違えようがない。
もしかすると夢が現実になるかもしれない。
不安な思いよりも喜びが勝った一瞬、行灯の灯がふっと消えた。

「ぐああああああ!」

振り返ったときには既に横の男は息絶えている。
さっさと逃がせばどうにかなったものを、と悔やむが後の祭りだ。
男の隣に押し倒される。上手く受け身も取れないまま、その場に倒れた。そのままされるがままに、指で無理矢理仰向けにされる。

「約束を守れなかったのか」

苛立ちを含むマダラの声。私情を持ち込んだことがバレればあの少年も殺されるだろう。

「どうしても、と言うから…少しだけやった」
「覚悟はできてるな?」

夜目にも映える深紅の瞳は彼の怒りを表している。どうなるかなど分かり切っている。だが、あの者を殺させる訳にはいかない。どのような関わりがあるかは知らないが、弟に繋がりのある者に違いない。
前をはだけて見える赤い痕に苛立ちを覚えながらそっと指を這わすと無意識に身体が反応する。

「そういえば、来てるらしいな」
「…………?」

反応を楽しみながらマダラは続ける。
時々強くすると、声を押し殺すのがたまらないと言わんばかりににやりと笑みを浮かべる。

「街で見かけたぞ…お前の弟を。どうやらお前を探しているらしい」

イタチが息を飲む前に口づける。貪るようにしつこい口づけに次第に息を上げる。

「いいか、すでにお前はオレのものだ。あいつと関わりを見つけ次第、あいつの命はないと思え」

何も返答ができないまま、イタチはただひたすら堪えつづけた。





















ついに知りました。ので出会うフラグ立った…?
立たせられたなら何よりです。
ちなみに補足ですがナルトは前回見た写真のことなんてすっとんでます。
見せたサスケは見たのだから覚えてるだろうって思ってますが。
そんな誤解があっての話。


2012/12/05
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