02

「どうすればいい…」

マダラの憑依が解けてから、随分と時間がたつ。とっくに目を覚ましたイタチだが、憑依の疲れで少しでも体を動かすのが億劫だといわんばかりにぐったりと柱にもたれている。いつもならとっくに疲れなどなくなっている頃だというのに。このような状態のまま神降ろしをするなんて無理だ。
サスケは苛立って髪を掻き上げる。やるとすれば丑三つ時だ。時間が迫ってきている。

「姉さん!ここから逃げよう」

イタチはまるで寝起きのようにゆっくりとサスケの方へ顔を上げた。

「いきなり…何を言い出すんだ」
「だってそうだろ!神降ろしをしない方法はもうそれしかない」

神降ろし、の単語でイタチははっと目を丸くした。

「どうして…それを…?」

サスケがしまった、と思う頃にはすでに遅かった。イタチが未だ掠れたままの声を出す。

「オレが寝てる間…霊に聞いたのか?お前…霊と会話できるように…なったのか…?」
「いや、姉さんそうじゃなくて…」
「言うな…」
「…え?」
「このことは…絶対誰にも他言するな」

何か大きな勘違いをしていることは分かるが、イタチの焦りが尋常ではないことが気にかかる。探りを入れるにはこのままの方がやりやすい。イタチには申し訳ないが、黙って話を合わせることにした。

「なんだよ、姉さん。たかだか霊と会話できることがそんなに危険なのかよ。姉さんだっていつもしてるじゃねえか」

イタチは重い体を起こして息を吐いた。さすがにここまでくると、マダラが相当霊力取ったのではないかと疑わしくなってくる。

「それとこれとは訳が違う。霊を見るなら普通の人にだって見える。霊と会話するには言葉に多少の霊力を使わなければならない。それに元々その力は女にしかないものだ。お前に備わっているとなると…」

そこまで言ってイタチが頭をおさえた。そんなに大それたことをしたという風に誤解を招いてしまったとは思っていなかった。
だが一番驚いたのは次のイタチの言葉だった。

「もしそのことが皆に伝われば…神降ろしはお前がすることになる」
「オレが…!?」

できるわけがない。が、ここでやればイタチがしなくて済むわけだ。どこの誰かは知らないが、いつものように神のお告げを聞きたい者には悪いが適当にあしらわせてもらおう。

「姉さん…今晩の神降ろし、オレがやる」
「な、何を言ってる!お前まだ神降ろしが出来るほど霊力ないだろ!」
「そんなの今の姉さんだって一緒だろ」
「それは……」

サスケはゆっくりイタチの肩を抱く。
昔から姉の力になれないことが悔しかった。偽りであろうともサスケには好機だった。
何か策があるわけではない。それでも、イタチを守れるのなら厭うことなど何もない。

(オレが必ず姉さんを守ってやる)

噛みしめた長年の想いは、夜風の音となって天に上っていくようだった。





















巫女姉さん書けたので満足して切り上げます。
巫女ってロマン…!本当ならひん剥いていろいろしたいけどそこはあえて自重。
このあともろもろあって平和に二人で暮らす…という話が続きますが、それはまた後。

2012/12/04
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