唐草ディール ナルトの誕生月だったのでどうにかしてナルトを登場させてやろうとした結果、サスイタ+ナルトになりました。 誕生月なのにナルトが不憫です。 ナルトのモノローグ形式。 昔から人にあまり好き嫌いがない方だと思ってた。だがどうみても苦手な奴っているのはいる。 例をあげるとするならシノだ。理屈を並べられてもよく分かんねえし、あの静かな感じも嫌いだ。 そんなシノとは似ても似つかねえけど、少し苦手な奴っているんだよな。 オレは今、そいつの家の前にいた。 「ナルトか、入れよ」 「どうぞ、ナルト君。たっくさん用意して待ってたぞ」 「あ、ハハハ…サンキュー……」 事は自分の軽い「おしるこ食いたい」の一言。 いつもラーメンばっかだから、たまにはと第二の好物の名を口にしたことを後悔してる。友人の兄が甘味好きでおしるこを大量に買ったらしく、良かったら今度家に来て食べよう、と誘われその場のノリで何も考えずに承諾してしまった。 家には勿論友人もいる。兄のことを最優先にし、最早弟というよりボディーガードといっても過言ではないような強度なブラコンの友人が。 兄のイタチに何かあれば自分は殺されるかもしれない。そんな不安とプレッシャーを抱えたまま、おしるこを食べて一体何が楽しいのか。 早々に立ち去りたい気持ちを抑えながらオレは促されるまま席についた。 「じゃあ、待ってろ。今作るから」 そう言ってイタチが台所で缶をとりだす。おかしい。缶ならそのまま開けばいいはず。作るも何もないだろ。 「おい、イタチ…作るっておかしくねえ?」 「え?どういうことだ?」 イタチが振り向いて缶の文字が見える。 そこには「あずき缶」の文字。オレはてっきりおしるこの缶だと思っていた。 「え………」 しまった、と思ったときにはすでに遅い。 隣に座るサスケが不機嫌そうに殺意を込めた目でこっちを見ていた。 「良かったな、兄さんの手作り独り占めできて」 暗に「残したら殺す」と示していて、オレは首元にクナイをつきつけられたような形で軽く食べたかったおしるこを限界越えて食うことになった。 サスケは態度が気にくわねえが良い奴だ。班での任務だってオレとサスケのコンビネーションは十班に負けず劣らずだと思ってる。友人だし、仕方なくって感じだが修行とか付き合ってくれるし。 イタチだって優しいし、美人だし。サスケと一緒で優秀だけどサスケと違って気取ることなんかしねえし。こんな兄ちゃんいたらオレだってサスケのように自慢ばかりするだろう。 だが二人が一緒にいる場は居心地が悪い。多分それはイタチじゃなくてサスケがイタチに対して敏感になるためだろう。だからイタチと対話するときは気を配らないといけなくて、気を使いすぎて苦しい。 「なんだ?遠慮せずにもっと食べていいんだぞ」 そう言ってどんどん食べてくイタチにオレもサスケもあっけにとられた。 イタチの食べてる量の半分以下でもう満腹感を味わってるオレの前にはまだまだ底を見せないおしるこの鍋がある。 横のサスケはというと甘ったるい匂いを我慢しながらオレの器が空になるのを見張っている。甘いの嫌いなんだから他の部屋で大人しくしてりゃあいいのに。 もう限界だ。胃が悲鳴をあげている。これ以上食ってれば糖分の取りすぎで頭がどうにかなっちまう。用事があると言ってこの場を退散しようとなんとか目の前の器を空にした。 「イ、イタチ…オレってばそろそろ…」 「ん?ああ、餅が欲しいのか」 おたまで今となっては邪悪なものにしか見えないおしるこの底から丸くて白いものを大量にすくって目の前の器に並々と注いだ。 「欲しいならいつでも言ってくれていいからな」 最早いつも女神のような笑みが悪魔の笑みにしか見えない。 半泣きになりながら食べているとサスケがいきなり机を叩いて立ち上がった。 「ナルト、お前この後一楽の前で忍者学校の教師と約束あるんだろ」 もちろんイルカ先生とそんな約束していない。流石にサスケも見かねて助け舟を出してくれてのだろう。そう考えるとやはり持つべきものは友だ。オレはすぐさまそれに縋りついた。 「そ、そうだった!オレってばすっかり忘れてた!!おしるこ美味かったってばよ!んじゃ!」 餅だらけのおしるこを一気にかきこんで、すぐさまサスケを引っ張って家の外へ出た。最後と思えば余裕で食うことができたから不思議なものだ。 「サンキュー、サスケ。助かったってばよ」 「…別にこれくらい大したことねぇよ」 何かを堪えるようにサスケは俯いたままだった。違和感を覚えてサスケを見てると見間違いか、サスケの口元がニヤリと笑った気がした。 「…サスケ?どうした?」 「我慢ならねぇな、あの口元」 は?と返事を返す前にじゃあな、とすぐさま家の中へと入っていった。 オレはそれを見届けながらやっぱり兄弟二人は苦手だと改めて思った。 2012/10/16 ←top |