12

「なかなかやるわね、イタチ。でも私はまだまだいけるわよ!」

限界を知らぬ二人の胃の中に次々と目の前の団子が消えていく。こうして団子を誰かと競いながら食べることはあまり経験がない。というのも、イタチの食べる量に匹敵する量を食べる者がいなかったのだから当然だ。
しかし今回はサスケを治すための情報がかかっている。なんとしても、負けるわけにはいかない。
食べようと次の団子に手を伸ばしたとき、急に息苦しさを覚える。酸素の通り道を遮る団子を流し込んでしまおうと水に手を伸ばす。

「うっ……」

それよりも早く喉の息苦しさが限界を伝える。
伸ばした手は水の容器を掠め、水が机に広がった。
流石に向かいで必死に食べていたアンコも手を止めた。

「ちょっとアンタ大丈夫?」

ゆっくり背をさすりながら、先ほどそそいだ水を飲ませてやる。今度はイタチも飲むことができた。

「す、すいません…」

「まっさか、アンタが団子を喉を詰まらせるなんてねえ!」

からかいながら口にしたものの、先ほどはアンコもヒヤヒヤした。
ふとイタチが隣においている花を見てアンコは思う。
イタチは彼岸花のようだ。美しく、立派なものだが、儚さを纏わせる。寝顔を一度見たことがあるが、それは死を思わせる。

「それ、どうにかしてほしいわ…ほんと」

イタチが困惑した表情でこちらを見る。確かにイタチに伝わるはずがない。
仕方ないとため息をつく。それもイタチの良さの一つかもしれない。

「いいわ。教えてあげる。早食いは私の勝ちだけどね」

アンコは一枚の折り畳まれた紙を取り出した。

「ここに私がかつていたアジトの場所が書いてあるわ。その時のアイツは不老不死の研究ばかりしていた気がするけど…もしかしたら何かわかるかもしれないしね」

礼を言ってすぐにでも行こうと支度をしてイタチは席を立った。

「イタチ、サスケのこと大切に思うなら側にいてやんなさいよ」

アンコの言葉を背で聞きながら微笑んでイタチは店を出た。食べた皿を軽い手つきで重ねながらアンコは呻いた。

「アイツの方が一枚多いじゃない……!」





急いで出たために水を持ってくることを忘れたことに今更ながら後悔した。
先程喉につまった団子を吐き出しても良かったが、おそらくそれだと団子だけでは済まないことをイタチは知っている。
目の前にいたアンコにも変な心配をされたくはなかった。

アンコに教えてもらったアジトにたどり着いたときには、その顔色を隠せないほど憔悴しきっていた。
店を出てから身体が重く感じるのは、薬が切れたのか、副作用か。今のイタチにそんなことを考える余裕はなかった。
研究室のようなところに入った途端、がくりと膝をついた。最早立っていることさえ苦痛だ。
机に体を預けながら、近くの引き出しを開ける。様々な資料があるが、字がぼやけて読めない。

「くっ……!」

そんな中こちらに何者かが来る気配を感じ、ゆっくりと立ち上がる。イタチは出来る限り疲労を見せぬようにクナイを構えた。

「あれ?アンタは……」

「うちはイタチか…?」

「なんでここにいるんだよ!?」

サスケの仲間である三人の姿を目に止めると安堵してその場にがくりと膝をついた。

「ねえ、かなりマズいんじゃない?香燐回復させてあげなよ」

水月が言うより先にイタチに駆け寄っていた香燐が容態を調べる。治療するにしても外傷は全くない。ならカブトのような医療忍術で内臓などを攻撃されたのかというと、そうでもないようだ。

「単なる怪我ではなさそうだな」

隣にいた重吾も気づいたらしい。しかしそれ以上はイタチが口を開かない限り分からない。
後ろの水月を見ると水を飲んでゆったりと休んでいる。相変わらずのんきだな、と冷たい視線を送っていたときイタチが口を開いた。

「サスケのことは…知ってるか?」

「サスケ?サスケに、何かあったのか!?」

首を縦に振るイタチに危機感を覚える。イタチがここまで無茶をするということはかなり大変なことなのだろう。

「サスケが記憶喪失になったんだ」

「えぇっ!?マジ!?」

休んでいた水月も驚いてイタチに駆け寄る。サスケが自分のことを覚えていないというのはかなり癪にさわる。しかし記憶喪失になったなら嘘の記憶を植えつけることもできる筈だ。自分の配下だったとサスケに嘘を教えても楽しそうだ。

「ねえ!病院へ見舞いに行こうよ!!」

「そ、そうだな。早く行かねえと!!」

イタチのことなんて考える余裕がない二人はすぐに出て行った。二人の後ろ姿を見てイタチがクスリと笑う。

「記憶がないのはオレのことだけなのにな」

「そうか、それでアンタはここまできたのか」

大蛇丸はいないが今も彼の研究は価値がある。多くの実験を重ね、妙なものから危険なものまである中で記憶喪失の手がかりになるかもしれないと探しにきたのだろう。

「だが、おそらくここにはないな。不老不死のデータばかりなんだ。他のアジトならあるかもしれないが…里を出なければならない。それよりサスケが記憶を失ったのはどこなんだ?」

「それは…」

言いかけてイタチは止まる。サスケが記憶を失った場所としてしか考えなかったあの場所。そして一部の記憶を消す忍術という誤った考え。もう一度あの場所に行かねばならない。

「一つ…お前に頼みごとがある」

重吾はイタチの言葉を聞き終えてからしっかりと頷いた。

「わかった、必ず渡す。だからお前もサスケに会う分の力は残しておけ」





「あ、きたきた!遅いよ重吾!!」

「ったく!サスケが一大事だってのに!急ぐぞ!」

このまま勘違いさせておくのも悪くないな、とイタチに渡された花を見て重吾は二人の後に続いた。





















多分この話考えてたときはアンコ先生がカブトに捕まる前だったはずです。
だからだよ!原作がうわああああな状態だし、ほんとはカブイタとかも考えてたんだよ!(あれ)
原作でまさか兄さんとカブト戦うなんて思わないからさあ!まさかだよ!!
というわけでカブイタはカットです。
なかなか好きだけどなーカブイタ。
穢土転生されてすぐのときは、そればかり考えてました…小説一本書いたような気もする。

2012/8/23

勢いで書き上げました、続き!
あと二話くらいで終わりそうなので終わらせちゃいたい!がんばります!
しかし鷹メンバー可愛い。兄さんとあまり関係っていう関係ないですけどまた絡ませたいな…!

2012/8/25top





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