笑顔になあれ うちは一族ほのぼの話。 時代なんてごちゃごちゃしてます。(参考は短編「団扇祭」) でもイタチ(6歳)とマダラしかでてきません。 苦手な方は回れ右。 「今日の〜晩飯は……」 夕暮れの中、土手を歩いていた。こういう道を歩くのは嫌いではない。静かな田舎道を通りながら帰ってからのことをマダラは考えていた。 「うおっ!?」 真っ正面から勢いよく何かがぶつかってきてマダラは後ろに重心をとられる。なんとか持ちこたえて尻餅はつかなかったものの、いきなり何かと少し下を見る。 「なんだ、イタチか」 それがイタチであると分かった後のマダラは穏やかだった。イタチは近所に済む知り合いだ。父のフガクとは仕事の付き合いでよく知っている。次男のサスケはまだ幼く、歩き方は覚束ない。 一方のイタチは年の割にしっかりしており、逆に子供じみたところがない。 しかしマダラは例外だ。かなり時間を要したが、二人きりでいるときだけイタチはマダラに甘えるようになった。 「どうした?迎えにきてくれたのか?」 イタチは顔を埋めたまま答えようともしない。 いつもと違う変化にすぐに気づきいたマダラは、しゃがんでイタチと視線の高さを同じにした。だがイタチの様子が変わることはない。 「何で泣いてるんだ?」 頭を掴んで半ば無理矢理に自分の元から離す。 そのまま上を向かせるのは容易なことで、涙で濡れた瞳と視線が合う。 見られるのが嫌なのか、イタチは手で涙を拭ってからすぐに視線を逸らす。 「別に…なんでもないです」 いつもよりも落ちた調子の声が言う。マダラもそう無理に問いただすことはしない。すぐに抱え込んでしまうイタチの癖は未だに直ることはない。 そうしてしまうイタチに自分がしてやれることは一つだけだ。 ひょいと小さな体を抱え上げ、ぽんと頭に手を置いた。 「帰る途中に団子屋があったんだ。お前が来ないから買わなかったが、結構美味そうだったぞ」 イタチが喜んでいる顔が浮かぶ。イタチの顔は自分の肩にうずめているため分からない。 だが事実イタチの泣きじゃくる声は聞こえてこない。マダラは満足そうに笑った。 「でもお前帰らなくていいのか?」 炭で焼いたみたらし団子をマダラに抱き上げられながら食べていたイタチは手を止め俯いた。 すでにイタチは泣いたあとが残るだけになっている。しかし聞いてはいけないことを聞いてしまったらしい。マダラはみたらしのたれが服につかないかちらりと見た。 「心配すんな。父親にはオレから言っておく。イズナが飯を作ってるだろうからお前も食ってけ」 イタチは急に明るくなり、コクリと思い切り首を縦に振った。 「お、お前!ついにやりやがったな!」 洗濯する際、イズナにどう言い訳しようか悩みながら笑顔になったイタチを抱いて帰途についた。 次 2012/5/8 ←top |