01

イタチはあからさまに嫌そうな顔をした。
普段何を考えているかわからない表情ばかりだからこれは嬉しいことなのだが、期待と正反対の表情というものは困ったものだ。

「どうしたものか…」

マダラは長い前髪を掻きあげた。イタチの反応は予想通りではある。いや、イタチでなくとも嫌がるだろう。
しかしだからといって無理強いはしたくない。

「イタチ」

そっと後ろから抱きしめるとピクリと跳ね上がる体。マダラのこの優しい囁きにイタチはいつも弱かった。
自分でもわかるくらいに体中の体温が上昇していく。せめて顔は見られまいとすぐさま俯いた。

「弟子のお前だからこその頼みだ。やってくれるか」

嘘だ。他に頼める輩がいないだけだと知っているものの、言葉の罠というものか。期待されている嬉しさで喜んでいるのも事実。イタチはおずおずと顔を見せないようにに後ろのマダラに問いかける。

「…何をやるのか、もう一度聞かせてください」

マダラは協力の兆しとして受け止め、先ほどよりもやんわりと説明してやる。

「簡単に言えばこの過去に戻れる薬とオレの時空間忍術の相性をみたいだけだ。時空間忍術といっても現代の空間を行き来する術にすぎない。それが過去の特定の時間に行き来することが可能なのか、それを試したい」

マダラは袋に入った一粒の薬をイタチに見せながら言う。
ああ、やはり実験台かと思うと嫌気がさす。

「これが上手くいけば…うちは再興も夢ではないかもしれん」

「な───!」

イタチは反射的にマダラを見る。すかさずマダラはイタチの顔を手で固定する。

「確実に過去に戻ることが出来れば、千住との争いをなくすことができる。そうすればフガクもクーデターを起こすことはなくなり、そしてお前も手を下さずに里で暮らすことができる」

過去を見ることなく、目先の利益だけを考えてきた一族の愚考の大本を作ったこの男が過去を顧みるとは何とも不思議なことだと思った。
マダラの思う平和とイタチの望む平和は異なるものであろうことは理解しているが、一族を想う気持ちの根本的な部分は同じだろう。
そうでなければ、このような考え方をする筈がない。

「わかりました。やりましょう」

そうして準備が整えられた。
四方八方に広げられた巻物はどれも大量の文字で埋め尽くされており、危険なことが伺い知れる。
いつも物事を軽くこなすマダラもこれは慎重に取り組んでいる。そんな師をみて少しばかりイタチもごくりと唾を飲む。水の入ったコップを握る手には汗が滲む。

「いいか。薬には副作用がある。一番の危険はその副作用だ。もしかするとお前の病の進行を早めることになるかもしれない」

「そればっかりはないものと思いたいです…」

冗談を笑い飛ばすように言ったつもりでもこの真剣に張り詰めた空気の場では無意味だった。
マダラは準備を終えたのか広げられた巻物の一つに手をついた。

「今から印を組む。巳、辰、午、寅の印の流れを合図にお前は薬を飲め。大体中盤あたりだからな、しっかり見ておけ」

どのあたりが中盤を指すのかも分からないままマダラは話し終えるなり印を組み始めた。
そのスピードも写輪眼を使わなければ追えない。結局よく分からないまま始められてしまったなとため息を小さくつく。
どちらにせよ、この人に逆らうことなど出来はしないのだから始めから実験台になる覚悟はしていた。
合図の印を見届けて薬を飲んだとき、ふとマダラの口の動きに気がつき、朦朧とする意識の中でこくりと頷いた。





















特別長編スタートダッシュです!
というわりに遅刻してますけど…。
でも違う2人の設定はとても楽しかった!
私の作るものは殆ど鬼畜っぽいマダイタになるのでまるっと設定変えてやれ!が大当たりしました。いいな!楽しいな!
でもそんなマダイタは終了(笑)
次からサスイタです、どんどん!

2012/6/3

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