初詣

里抜けして暁入る前の師弟のお話。
今回はサスケのことばかりな兄さんにマダラが悪戯する話。それでも遅刻の初詣編。
続き物でも短編でもどちらでもお読みいただけます。
苦手な方は回れ右。



カラカラと風車が廻る。
風が吹いていないのにも関わらず廻っているのは、時を刻む針と同じな気がする。昔こうしてサスケはよく風車を手で廻したり、息を吹きかけて廻したりしていたな、と廻しながら感傷に浸る。
いつもの小屋にイタチはいた。
森のなかに寂しく佇むこの小屋は、マダラが今の隠れ家として使っている。他人が森に入れば、特別な幻術にかかり、例え忍であったとしても小屋を見つけることは不可能だ。
それゆえイタチはしばらく他人と関わりを持っていない。あるとすればマダラくらいなものだ。最初は苦しかったものの、次第にはこの生活に慣れてきた。

「お前はずっと風車か」

縁側に座るイタチの背後の柱にもたれかかりながらマダラが言う。やることのないこの小屋は、必要最低限のものしかないため殺風景である。だからイタチに欲しいものはないか、と尋ねて返答したものを与えてやった。
与えてやってから後悔した。イタチは一日中その風車を廻している。現れるときくらいはこちらを見ていたというのに、視線はずっと風車である。これでは面白くない。

「兄貴」

予想通りにイタチはこちらを向いた。サスケに変化すれば風車から視線を外すことなど容易なことだ。しかし、イタチはマダラと分かっているためすぐに顔をしかめた。それに構うことなくずいと顔を至近距離まで近づける。

「なぁ、初詣行こうぜ」

は?と聞き返される前に手を掴みイタチを外へ連れ出す。道に抜けて少し歩けばすぐに神社の参道に着く。小屋に居っぱなしのイタチにとっては久しぶりの外である。

連れてこられた神社は寂れており、雑草が生い茂り、木が建物に好き勝手に絡まっていたりと見てわかるように荒廃していた。
このようなところに訪れるとすれば余程の物好きとしか考えられなかった。

「さあ、参拝しようぜ」

サスケに変化したマダラが数段の石段をイタチを連れて上り、懐から出した賽銭をピンと投げる。一体何のつもりかと横目で見ていると、パンパンとゆっくりとした調子で柏手を打った。

「これからも兄貴と一緒に居られますように」

発したあまりにも突拍子な願の言葉に眼を丸くする。参拝が済んだ後にマダラは賽銭を隣のイタチに渡した。

「ほら、兄貴もだぜ」

どういう意味でマダラがそう願ったのかも分からないまま無造作にイタチも賽銭を投げた。

「これからもお前が幸せでありますように」

願の言葉を発して隣を見ると首を傾げたマダラがいた。

「どういう意味だ、それ」

「分からないままでいい」

変化を解いた師に笑いながらふいと顔を背けてその場を後にした。




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