チョコビート

一足も二足も遅れたバレンタインネタ。
バレンタインなのでイタチ(♀)×サスケで現パロです。
OKな方はどうぞ。



昨夜に入った布団はすでに暖かい。肌寒い朝になれば、人の体温で暖かい布団から出たくなくて余計にもぐりこむ。結果、サスケは頭まで布団を被り丸くなった。

「サスケ、朝だぞ」

夢うつつに心地好いイタチの声が聞こえた。少し寝ていたのかもしれない。しかし、脳裏にイタチの姿を浮かべた途端、ぼやけた頭はすぐに意識をはっきりと取り戻す。今日はずっと待ち遠しかったあの日ではないか。

「き、今日って……!」

飛び起きて焦るサスケとは反対に、平静でいるイタチは壁にかけてあるカレンダーを見る。

「14日だが…どうかしたのか?」

サスケの顔が次第に晴れ晴れとしていく。急いで布団から出て支度を始める。イタチの質問の答えは返ってこない。理由が分からなくて不機嫌そうに顔をしかめているイタチに気づき、笑ってサスケは答えを返した。

「学校の席替えだよ、姉さん」



「なんだ、席替えか」

今度はサスケが不機嫌であった。
席替えがあると教えてからずっとイタチは小馬鹿にしたようにクスクス笑っている。

「そんなに笑わなくったっていいだろ」

イタチが置いた朝食のおにぎりをかじりながらサスケは言う。

「いや、席替えで喜ぶなんて子供だと思ってな」

向かい側に座って茶をすする。イタチは大学生で、すでにこの時期は長期休暇に入っている。そのため、朝でも寝巻の浴衣のままでいることが多い。いつも束ねている髪も下ろしており、寝起きそのままの状態だ。

「いいよな、休みの奴は。ゆっくりできて」

「ん?そうか?まあ、お前のように忙しいわけではないけどな」

考えてみれば一人で食事を取ることがなくなったのは、イタチが休暇に入ってからのことだ。サスケが起きたときには食事の用意だけされている。大学生のくせになんでそんなに早く出る必要があるんだといつも苛立たしげに思っていたが、いつのまにか慣れてしまえば、自然と思うことはなくなった。

そろそろ時間というようにちらりとイタチが時計を見てこちらに目配せする。ゆっくりしている人を見れば行く気が失せるのは当然のことだ。ただ、サスケにとっては他の理由もあるのだが。

「分かってるって。行けばいいんだろ、行けば」

ふいと冷たく言い放って、乱暴に鞄を肩に担ぐ。
イタチにとってはそれは既に日常の一部としか感じていない。微笑みながら手を振って見送るのみだ。

「行ってくる」

強く扉を閉めてからため息をつく。
もう少しだけ側にいたかったと思いながら重たい足取りで家から遠のいた。



「ただいま」

それからしばらくして帰ってきたサスケは、両脇に大量の紙袋を抱えイタチの前にどさどさと置いた。これが何であるかはすぐにわかる。

「沢山もらってきたな、クラスの子だけじゃないだろ」

「ああ、靴箱にも入れられてたからな。殆ど原型留めてねぇよ」

包装された大量のチョコレートには手紙もついていたり、チョコの他にもプレゼントが入っていたりと様々だ。
ぼーっと眺めているイタチを見つめながら、サスケはさらっと口にした。

「そのチョコ全部食っていいぜ」

「でも作ってきた子たちが可哀想だろ?」

「いいって。オレ甘いの嫌いなの知ってるだろ」

「でもビターチョコとか使ってくれてるぞ?」

「あのなぁ……」

サスケははたと一瞬硬直した。
どうかしたのかと声をかける暇なくサスケはすぐに一つのチョコの包装紙を破り始めた。
やっと食べる気になったのか、と満足していると口に広がる苦い味。

「何するんだ」

「何って、食いたかったんだろ?」

「別にそういう意味で言ったんじゃない」

何もわかっていないと言わんばかりに口を尖らせているイタチを可愛いと思いつつ、もう一つ包みを開けはじめる。

「馬鹿だな、バレンタインの意味を理解しているのか?」

「は?それってどういう…」

イタチは細くしなやかな指でそっとサスケの持っている包みから一粒チョコを取る。それを指でつまんでサスケの口へと運び、妖艶な笑みを浮かべる。話していたサスケの口の中に広がるのはビターなチョコの味。

「…バレンタインは女があげるものだぞ」

サスケは顔を染めるかと思いきや、驚くことさえもしない。それどころかすぐにイタチににたりと笑いかけた。

「知ってたからずっと待ってたんだぜ。姉さんからのチョコ」

かあっと顔を染め上げたイタチを可愛いと思いつつ、来年はどうしようかと考えてにやりと笑みを浮かべた。




















やっと書けたバレンタインネタ。
かなり遅くなってしまいましたけど、ネタはバレンタイン前から決めてました。うん、言い訳。
裏の裏を読め!みたいな展開好きです。イタサスイタ?よく分からないけど。

2012/02/25

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