この縁結べ

兄弟のみで、初詣。
いつものサイトの兄弟なんで、ほのぼのしてます。



この縁結べ

「サスケ、初詣に行かないか」

思えばそう兄貴が声をかけてきたことが始まりだった。

「初詣?そういや行ってなかったな。つーか、除夜の鐘も聞いてねぇし」

遥か昔の幼い頃、南賀ノ神社の梵鐘の音は聞いていたが、今はもう鳴らす人さえもいない。それに里の中心地から外れた集落だから、里にある神社から少し距離も離れている。わざわざ寒い外へ出てそこまで行こうとも思わない。
…自分では。

「…まあ、兄貴が行きたいってんなら別にいいぜ」

オレの返事に嬉しそうに微笑む兄貴。数秒間は見とれてしまうのでオレはすぐに視線をそらした。

「じゃあ支度が出来たら出掛けようか」

「ああ、いいぜ」

適当に支度を済まし、兄貴を待つ。普段なら着物をよく着る兄貴の方が支度は早いのにな、なんて考えてたらひょっこり兄貴が現れた。

「待たせたな」

美麗ってこういうこと言うんだな、と改めてオレは思い直した。兄貴らしい黒い着物は白い肌によく似合う。赤い帯や白い足袋などをじっと見ているとオレはあることを思いついた。

「兄貴、仕上げができてねぇよ」

「仕上げ?一体何のことだ?」

着物の裾や襟などくるくる確認するその所作がまた可愛らしい。いつも着物着てるアンタが着方可笑しいなんてことあるわけないだろ。

「仕上げはオレがやるから、ここに座ってろ」

兄貴はまだ仕上げが何のことなのか考えながらオレの言うことに従った。オレはすぐに準備をして座るイタチの後に立った。

「サスケ、一体なんなんだ?」

「いいから大人しくしてろ。オレがやるから」

そう言って流れたままの兄貴の髪に櫛を通す。本当に今朝といてないのか、と疑いたくなるほど絡まりのないその髪を手で触れてみる。想像以上の心地よさに本来の目的を忘れそうになり、すぐに手を離して作業に戻る。
手早く事を済ましてオレは座っている兄貴を正面から見た。

「出来たのか?その仕上げは」

「ああ、ばっちりだ」

いつか差してやりたいとは思っていたが、赤を基調にした簪は兄貴によく似合う。
確認されるときっとすぐに外すと踏んだオレは鏡を見せずにそのまま兄貴を外へ連れ出した。

「さっさと行こうぜ、初詣」



思ったよりも人がいないのは、三が日を過ぎたからだろうか。静けさと侘しさが残る神社は南賀ノ神社と変わりがない。
だが今の兄貴の姿を他の奴に見せなくて済むということに関しては幸いだった。
兄貴も先までは仕上げを気にしていたようだが、神社に来た時点で気に止めるのをやめたようだ。

「初詣なんて何年ぶりだろうな」

昔を思い返すような兄貴の口振りにオレは顔をしかめた。未だに自分の非であると思っている兄貴は、申し訳なさそうに目を伏せる。オレはいつもその兄貴の表情を見るのが辛かった。
その空気を変えるためにオレはいきなり兄貴に抱きついた。

「サ、サスケ!?」

「神社で参拝中に何してんだって言いたいんだろ」

ニヤリと笑いながら耳元で囁いてやる。抱きしめているため表情は分からないが、必死に首を縦に振っている。
簪で髪を結い上げているからよく見える白い首筋。オレはたまらずうなじにキスをした。

「わ、わかっているならこんなことは…!」

「でもここ、縁結びのご利益あるんだぜ」

神社の立札に書かれた文字。厄除けだけかと思っていたがなかなかいいご利益あるじゃねぇか。

「いいだろ、別に誰が見てるってわけもねぇし」

「…神様が見てるかもしれないだろ 」

「だったら神に見せつけてやるよ」

さっきよりもぎゅっと強く抱きしめた体は温かく、心地良い。それは唇を重ね合わせた感触にも言えることだった。

「兄貴、今年もよろしくな」

「…そんなの当然だろ」

離した時に互いに笑って言葉を交わす。
縁結びなど生まれた時からオレと兄貴についてる強運だ。今さら他の縁など必要ない。
願わくばこの縁ができる限りこの世で長く続きますように。




















明けましておめでとうございました!
2012年最初のお正月小説はやはり兄弟で書きました!
新年早々二人でラブラブに過ごしていたらいいなぁーと。
今年もいつもの調子で運営していきますので、よろしくお願いいたします!

2012/01/05

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