風車


カラカラと戸を開ける。世辞にも豪華とはいえぬ質素な宿である。しかし、今の身分となってはこちらの方が好都合だ。

「これで泊められるだけ泊めてくれ」

一枚の小判を卓上に置く。高い金を持つ者ならば、格式の高い旅館にでも泊まる筈だ。まして小判であれば旅館で一週間は泊まれる。わざわざ安い宿を選んだということは、かなり長期の宿泊を目的としているのだろう。

「ええさ、うちなんぞのおんぼろ宿に来る客など少ないからの。好きなだけおりなされ」

「…礼を言う」

ちらりと見えたのは黒髪と澄んだ黒の瞳。あの強く引き締まった力のある眼差しは今までに幾度と見てきた侍たちと同じもの。

(格式のお高い侍であろう)

何故このような所へ泊まりに来たのかが掴めない。だが泊まりに来た者へ失礼にあたるから、それ以上の詮索はやめた。





部屋で道中で汲んだ水を飲み干す。
喉を潤わせてから、障子を開けた。下に見える賑やかな往来。今度はここで聞き込みか、と考えて障子を閉めて畳に寝転がる。
近くに聞こえる鳥のさえずり。朝に聞きながら起きては、出かける兄を見送りそこねていた日々は既に遥か昔の話。

「好きにしろ」

最後に聞いた兄の言葉を思い出す。
いくら叫んでも気を失った兄には届かない。男は人を嘲笑うようにイタチを連れて去った。
サスケの中に残ったものは、この上ない心の空白と、奴に対する復讐心だった。



あれから八年が経つ。
すでに木ノ葉国の大名は変わっており、初の女性が大名の座についた。名は綱手という。
だがあまりサスケは綱手を知らない。綱手が大名になってすぐ、サスケは国を出た。
サスケにしてみれば、それはかなり遅い出立だった。本当ならばイタチが居なくなった次の日の筈だったが、ヒルゼンから諫められたのだ。

「今のお前では幼すぎる。それに奴の情報も少ない。次の大名が決まったときに出ろ。それまでにワシが出来る限りの情報を集めておく」

大名直々に言われたこともあったが、ヒルゼンの言い分も最もだった。だからサスケはひたすら剣術を磨いた。
ヒルゼンが病で亡くなった時に集まった情報は、ほんの一握りのものであった。サスケはそれを頭に刻みつけて国を出た。

国を出ても生活には困らなかった。家の金は充分すぎる程だったし、目立つ行動を避けるために最低限のものしか買わないようにしているから、なかなか減ることがない。

村や里などをいくつも巡っているが、なかなか情報は集まらない。ヒルゼンが集めた一握りの情報は、かなり苦労したことだろう。
進展が全くない情報収集にうんざりしているが、他に見つける手立てがない。地道にやるしかないことに小さくため息を吐き、サスケは体を起こして町へと繰り出した。




















人探しの旅を続けているサスケの話。
タイトル「かざぐるま」は同じことの繰り返しなサスケに当てはめたもの。
風車だってずっとくるくる回る繰り返しですから。
というか前回かなり酷い表記間違いしてました…!
今は直しましたが、かなりネタバレしてたじゃないか私(笑)


2011/11/22

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