9月

秋といえば、

「そりゃあ芸術の秋だろ!」

元気よく先程作った造形物をイタチの目の前に差し出した。

「見ろ!オイラの芸術作品だぞ、うん!」

しかしデイダラの予想は外れイタチの視線は変わることはない。無関心にただ差し出された造形物を見て一言呟いた。

「これは何だ?」

カチンときたデイダラは大声で叫ぶように答えた。部屋にいるメンバーでさえ煩いと思うのだから、一番近くで叫ばれたイタチは鼓膜が破れるかと思った。

「何だって何だ!これはオイラの鳥だぞ、うん!オイラの傑作だ!」

コウモリに見えた、とは言わずにもう一度みる。耳がキンキンしているせいか、頭痛がする。

「確かに…鳥だな…」

「そうだろっ!最高傑作だろ!うん!」

もう構うのが辛くなったから、適当にあしらわれたとは露知らず満足に頷いていると、イタチははっと何か思い出したようにすたすたと部屋から出ていく。

「いきなりどうしたんだ?うん」

「…少し用事を思い出したんだ」

「もうすぐ集合かかるらしいぜ」

「それまでには戻る」

言葉を返すイタチはどこか辛そうで。一体何があるのかと口から出そうになるもののぐっと堪えた。
他人の用事なんて首を突っ込んだところでろくなことがない。

「嫌なら行かなきゃいいのにな」

そう一人で呟いてからまた創作活動に耽った。





「はぁ?イタチの奴いねえのかよ!うん!」

集合したのはイタチを除くメンバー。鬼鮫に尋ねるも首を傾げるだけ。どこに行ったのかやほり聞いておくべきだったと今更後悔した。

「落ち着け、デイダラ。イタチにはオレから話す。…それより尾獣についてはどうなっている」

自分はノルマを既にクリアしていたから、とてもつまらない話でしかない。イタチはどうしているのか、どこにいるのか、それぼかりが気がかりでしょうがない。気を少しでも紛らわせるために手の粘土で造形を作る。

「よし、ならば次は二尾だ。飛段、角都捕獲次第報告しろ」

話の終わりが見えてきた頃にデイダラは作った小さな造形物をしまった。
角都の静かな返事と飛段の面倒くさそうな返事が聞こえたときには既に終わっていた。それと同時にペインが去る。それを確認きてからデイダラはそこを飛び出した。

「ぜってえリーダーよりも先にイタチを見つけ出してやる!うん!」

最近、何度かリーダーに呼ばれてイタチがリーダーの部屋に行っている。やましい事ではないだろうが、リーダーもイタチも、知っているであろう小南も何も教えてくれない。
先程作った造形物を取り出して巨大化させ、飛び乗ったり
空中からイタチを探せば、とても簡単に見つけられた。

「イタチ!」

下へ下へと落ちていく。何で、何があったかは頭の隅においやって、デイダラはイタチを空中で捕まえた。

「デイダラ……」

「大丈夫か?うん」

呆然としているイタチの頬を突く。反射のようにイタチが動いたものだからデイダラもすぐに手を離した。

「すまない……」

「何があったんだよ」

イタチが顔をあげて指をさす。何かと思ったデイダラもつられて顔をあげる。
それは頭上から遥か上の崖。

「あそこから落ちたんだ」

あの高さからならデイダラが受け止めていなければ即死だっただろう。平然と言うイタチが怖い。
衝撃を受けているデイダラの表情が可笑しかったのか、クスリと笑うイタチ。

「なんだよ!」

「…いや、唖然としていたから」

「そりゃするだろ!あんな高さから落っこちて生きてるのは旦那くらいなもんだ、うん」

真剣に言うもイタチは首を傾げるだけ。意味が通じてないのか。全くの平気と言いたいのか。
デイダラは目を逸らして口を尖らせた。

「心配…してくれてるのか?」

「ば、馬鹿。そんなんじゃねーよ、うん」

今の表情なんて見られたくなくてイタチに背を向ける。
何分かのように感じられる沈黙が流れた。

「とっとと戻るぞ、うん」

「…あぁ」

静かで穏やかな返事。先程と違って嬉しさが混じっていることを背で受け止めてそっと安堵した。






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