prank


普段の設定のうちは兄弟。
木ノ葉でのほほんとしています。知らない子どもがちょこっと登場


橙の夕日はとうに沈み、今は既に空は夜に覆われている。しかし、いつも以上に明るい里には、賑やかな声と楽しそうな笑いが溢れていた。

「トリックオアトリート!」

何人もの子どもたちが大人たちに、にこやかに両手を器の形にして差し出す。差し出された大人たちは、その小さな手にたんまりと菓子を乗せてやる。すると子どもたちは、それぞれ持っている袋などに菓子を入れて、他の大人へと駆け寄り同じことを繰り返す。
夜が橙に染まった里をイタチは団子を食しながら眺めていた。年に一日だけの祭に変わり果てた里といえども、イタチが愛してやまない里に変わりはない。眺めているだけで心が満たされる。

「ここにいたのかよ」

振り向くと黒のマントを羽織り、目を三角に切り取ったカボチャの提灯を持った少年が立っている。

「サスケか」

よく見知った弟の顔が、提灯の灯りで浮かび上がる。纏う黒のマントが、夜の闇と同化してよく見えない。しかし肩から下げている袋は、先程見たばかりの見知ったものだった。

「お前、甘いの嫌いじゃなかったか?」

「これは子どもにやる分だ。オレは食わねぇよ」

どうやらそういう任務らしい。こうも大きな祭りになると、興奮する子どもたちが迷子や危険なことをしかねない。それに秋ならば暗くなるのも早い。サスケの同期の者たちは、この見回りの任務に参加している。

「アンタにもやるよ。甘いの好きだろ」

子どもに渡すための菓子を袋から適当に一掴みしてイタチの前に差し出す。
「オレは子供じゃないぞ」

「そうじゃねぇよ、余ったからやるって言ってんだよ」

クスリと笑うイタチに菓子を押しつけるように渡そうとする。祭は始まったばかりなんだから、余ったかどうかなんてまだ分かる筈ないじゃないかと目の前の菓子を見て笑いながら思う。
その様子をどこから見ていたのか、サスケの菓子を目当てに子どもたちが駆け寄ってきた。

「お兄ちゃん、それちょうだい!」

イタチは子どもに向かって微笑み、サスケから菓子を取って子どもたちに手渡そうとした。

「ダメだ」

すぐさまサスケがイタチを遮った。そして袋から新たに菓子を引っつかんで子どもたちに差し出した。
受け取った子どもたちは目をぱちぱちと瞬かせ、首を横にかしげた。

「どうしてあっちのはダメなの?」

あっち、と言いながらイタチが持っている菓子を指さす。サスケはしゃがんで子どもたちと視線を合わせた。

「あれは、アイツにイタズラされないようにオレがアイツにあげたものだからだ」

「そうだったんだ。じゃあ僕があのお菓子をもらったらお兄ちゃんイタズラされちゃうね」

それは危ないことしたな、とはにかみながら笑う。全く子どもは純粋で素直だ。子どもは嬉しそうに笑って手を振りながら走り去っていった。

「嘘を教えるなんて酷いお兄ちゃんだな」

「それはそっちも同じだろ。つーかアンタの方がよっぽどたちがわるい」

それもそうか、とイタチは悲しげに苦笑した。サスケはその笑いがイタチの表情の中で嫌いなものだ。見ているだけで心苦しくなる。

「あ、これやっぱり返すな」

表情をころっと変えて、イタチが手のひらに乗った菓子をサスケの方に差し出す。またこの件かよ、とため息を吐きたくなるが、イタチが先程とは違う笑みを浮かべているのを見て安堵した。渋々といった調子でイタチから菓子を受けとる。

「ったく、遠慮することなんか…」

その時頬に何か柔らかいものが触れた。それがイタチの唇であると理解するのにさほど時間はかからなかった。

「菓子を返したからイタズラしてやった」

イタズラっぽく笑うイタチに、しばらくサスケは呆然としていた。
イタチにとってみれば本当に冗談だったのだろう。しかし、サスケにはイタズラとはどうしても捉えきれない。

「アンタには一生菓子なんかやらねぇからな」

かなり怒った口調でそう伝えるのが精一杯のサスケと、怒りに触れてしまったと悲しげに目を伏せるイタチ。二人が分かり合うことがない夜だった。




















かなり遅れたハロウィン小説です。
兄弟ならお菓子以上に甘い生活送っているので(特にサスケが)遅刻なんて関係ない!
ずっと旧携帯に放置されていたので、up出来て良かったです。

2011/11/11

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