団扇祭

※後編です。



「マダラの奴か…」

サスケは苦い顔をしたが、セツナもヤクミも険しい表情をした。頭領であるマダラのことを呼び捨てにするのは無礼に値する。一族の中でもサスケくらいなものだ。だが、弟のイズナが許しているし、マダラ自身も気にしていない。寧ろどこか喜んでいるようだ。

「サスケ、オレも一緒に行くよ」

また兄さんが迷惑かけているようだし、と苦笑して続ける。よくマダラの起こす突発的な行動は、イタチのふらっとすぐどこかへ行く行動とよく似ている。サスケは少し笑って頷いた。

「じゃあここからは副長さんに任せるとするかな」

ニッとシスイが笑う。シスイは祭の管理者でもあるから、あまりサスケに付き合うことも出来ない。だが、イズナが一緒に居てくれるなら心強い。

「悪かったな、シスイさん。やることあるのに」

サスケは申し訳なさそうに目を伏せる。シスイはサスケの頭を撫でながら笑ってみせる。

「別にオレがお前についてきただけだろ。謝る必要なんかねぇよ」

じゃあ副長お願いします、と軽くイズナに頭を下げた。ニコニコと笑うイズナの笑顔や少し微笑むサスケを可愛く思いながら、シスイはくるりと背を向けて表の境内へと消えていった。

「さて、オレ達も行こうか」

場所は分かるのかとサスケが問うよりも先にイズナに手を引かれる。そのままイズナが走り出すため、サスケもつられて走り出す。
二人はいつの間にか境内の祠堂の前へと来ていた。
この辺りには提灯は吊られていない。先の明るい本堂とは違う暗がりに目は慣れてはいない。しかし、二人とも忍だ。人の気配は例え目が慣れない暗がりとて、はっきりと感じる。それが誰であるかも分かっている。

「兄貴!」

「兄さん!」

二人が叫んで駆け寄るのはほぼ同時。必死に探した二人と対象的に探された二人は「あぁ来たか」と軽い返事だった。

「ったく探したんだぜ」

はぁといつもの深い溜息と吐く。それでもいつものようにニコリと微笑むイタチに本気で怒る気にはなれない。

「そうだよ兄さん、サスケに謝らなくちゃ」

「あーそうだな」

そう叱っても鵜呑みにするような返答のマダラにイズナは更に怒りを覚える。弟のそれに気付かぬマダラではない。仕方なくサスケに心の篭っていない謝罪を口にする。

「悪かったな」

それでイズナの怒りが鎮まる筈がない。だが何度やっても同じことはサスケには分かっていた。プライドの高いマダラから謝罪の言葉を口にさせるだけでもかなりすごいことだ。サスケはイズナに充分だ、と伝えた。
その言葉に渋々イズナも承諾した。イタチは尚も笑って他人事のようにそのやりとりを見ている。
元を辿ればアンタがふらっと消えたせいだと突っ込みたくなる衝動をぐっと堪えた。

「何でまた兄貴を連れて来たんだよ」

恐らくマダラの気まぐれだろう。イタチをこうして引き連れていくのは今に始まったことではない。聞いても無駄だと知りながらも、聞かずにはいられなかった。

「もうすぐ花火が上がるからな」

意外な返答にサスケは顔を上げて目を丸くした。イズナもむっと口を尖らせている。たかが花火を見るために引き回される弟の気持ちを何故兄は考えたりしないのだろう。

「酷いよ兄さん。オレも連れてきてくれれば良かったのに」

(…そこかよっ!)

思わず出かかる心の声を押し込む。そんなイズナに同情するようにイタチが悪かった、とずっと謝っている。何だかぐだぐだな光景だといつの間にか客観視している自分がいる。しかし、何か気に食わない。その何かは分からないまま本能に任せるようにサスケは動いていた。
サスケがイタチを、マダラがイズナをそれぞれ引っぱるのはほぼ同時だった。

「…兄さん?」

「…サスケ?」

二人が首を傾げた時、空の花が咲いた。照らされるは愛しい人の顔。その花よりも美しい花は今ここに居る。そんな想いを悟られないように言葉で覆った。

「「綺麗だな」」

二人は花が咲いたようにニッコリと微笑んだ。




















4人(うちは兄弟)で締めくくり。これぞうちは祭ってもんじゃあないかと思う存分やりたい放題でした。
またオマケ小説とかで何だか色々書きたい…!機会があればまた祭やります。カガミさんとオビトが兄弟って原作で発表されたら…ね!(絶対ない)
しかし、兄弟で…の筈が何だか攻受出ちゃった?まあそれはそれで。
イズナもイタチも完全に花火に言ってるんじゃないって気付いてます。そりゃあ相手を真正面から見つめて「綺麗だな」とか言ったら誰だって…ねぇ!
マダラとサスケって似た者同士だから本人たち気付いてないけど、同じようなことしてるんだって。イズナは頭が異常だから(え)気付いているのは兄さんくらいです。

なんにせよ、やはりうちはの家系図が欲しい。

2011/10/27


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