地変

外の騒がしさにサスケは目を覚ます。祭りかと思ったがどうやら違うようだ。障子を開けても人の声しか聞こえない。

(あれは…南賀ノ神社だ)

どこの部屋にも兄や両親がいないことに気付き、すぐにサスケは家を出た。行灯で道を照らしながら夜の道を急ぐ。通り過ぎる家々の明かりが一つもないことを不思議に思いながら南賀ノ神社へ向かった。

南賀ノ神社はサスケの家からさほど遠くはないが、境内は広い。祭や儀式などはよくここで執り行われる。
火の神を祀るこの神社は、祭祀の意味を込めて行事の時は釣り灯籠を飾る。釣り灯籠の明かりは夜になると火のように神社を照らす。南賀ノ神社で行事があるなんて全く知らなかったが、皆がそこに居ることはサスケにも分かった。





南賀ノ神社に着くとサスケの思った通りみんないた。だが、冷たく横たわった者たちばかりで、その中には両親もいた。

「父さん…母さん…なんで……」

ふと前を見れば茫然と膝をついたイタチの姿があった。この場で生きているのは何故か兄のみである。

「兄さん!」

サスケは何故とも考えずにとにかくイタチの方へ駆け出した。兄が生きていたことの喜びがこの凄惨たる事から逃れられる唯一の理由だった。
だが肩を何かが掠った。何かと思って肩を見れば血が出ている。それを傷と自覚した頃にはかなりの痛みが走っていた。
だが気配はある。もう近くまで迫っている。今度は確実に仕留める気でいるのは分かった。

(来る…!)

分かっていても体は動かない。サスケは幼いながらも武士の家だ、死を恐れはしない。両親や皆もきっとそうだと言い聞かせ、迫りくる何かを見据えた。
だがそれはサスケに当たることはなかった。サスケに触れたのは寧ろ優しい兄の温もりだった。

「兄さんっ!!」

大丈夫というように、サスケをぎゅっと抱きしめるイタチの首の後ろは長い髪で少し隠れてはいるが、先程のサスケを庇った傷がある。

「大丈夫か、サスケ」

ゆっくりとサスケを離し、眉間に皺を寄せて荒い息を吐く。首の傷が致命傷にではないことを祈るしかできない。

「兄さん…すぐに薬師に……」

目の前の男の出現にその先を言えなかった。イタチも傷を押さえながら気配を感じたのかすぐに振り返った。今まで二人だけだと思っていたこの場所には、いつの間にかもう一人居たのだ。
黒い装束で顔は分からないが、片手に持つ鋭い刃物の先の赤さを見て、サスケは拳を握り締めた。

「お前が皆を……!」

覆面の下で笑っているのははっきりと見えた。怒りに任せて覆面の男に殴りかかろうと走りだした。右肩の痛みなど最早感じていない。だが次の瞬間、鈍い音と同時にサスケが呻いて本堂へと飛ばされた。

「サスケッ」

駆け寄ろうとするイタチの首をすかさず絞め、乱暴に自分の元へと引き寄せる。

「来い」

「ぐ…っ!」

サスケにニヤリと笑いかけ、覆面から覗く目が湛える挑発的な眼差しをサスケに向ける。サスケは歯ぎしりをして叫んだ。

「兄さんから離れろっ!!」

自分でも分からないうちに駆け出していた。だが奴には敵わない。また鋭い風が右肩に対照的に傷をつける。鋭い風があの刃物であることは分かってはいるものの、受け止めることも躱わすことも出来ない。

「弟には…手を…出すな…」

苦しげに言葉を吐くイタチにピタリと動きを止める。が、それも一瞬のうち。イタチを離し軽く突き飛ばしたかと思うと、イタチを下敷きにして座る。

「兄さんっ!」

刃をイタチの首に当てたため、サスケが近寄ることは出来ない。
したり顔で見下しながら笑う覆面は悪魔のように見えた。








































この中編はサスケ視点で物語を展開していきます。
久しぶりに戦闘書いた!スピード感出すのは難しいけど書くの楽しかったです。
ちなみにサスケの持っていた行灯の行方はご想像にお任せします。とにかく無くなったんだ!もうぶっちゃけていうとバラバラに壊れてます。

2010/10/11

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