序噺 ここは行商人が行き交い、活気づいている平穏な木ノ葉国。 80年という時代でいうとまだ長いとは言えない時が創立してから経っていた。 その国に壮大な武家屋敷が建っている。見た目だけでも位の高い家柄であることが明白なこの家は、創立期から続くうちは一家のものである。 「行ってきます!」 そう言って飛びだしたのはうちはの家の次男坊、サスケである。 サスケはまだ八つであるが、寺子屋で一の成績を誇っていた。 一家の名を継ぐため、父に認めてもらうため、彼は熱心に勉学や修業に励んでいる。 笑顔で見送る母のミコトもサスケが見えなくなると、暗い表情になる。まるでこれから家で起こる事とサスケを隔てるように、その門を閉めた。 「…ついに今日か……」 フガクの正面に座しているのは、長男のイタチである。 この部屋の重々しい空気とフガクの苦々しい表情からして何かあることをもの語っている。 「…はい、覚悟はできています」 イタチは部屋の空気を一変させるようにニコリと微笑む。それはフガクに僅かな安らぎと無力さを与えた。 「すまないな、イタチ。お前にこのようなことを…」 イタチはハハと笑う。しずんだ面持ちのフガクとは対照的だ。 肩を震わせて笑うイタチは子供っぽさもありながら美しい。男児といえども整った顔に切れ長の目、長く絹のような整った髪は女と見間違えても不思議ではない。 「それにこれはオレが望んだこと。父上は成功を見届ければ良いのです」 「そうはいってもサスケと離れ離れになるのよ」 襖を閉めたミコトが口を挟む。 二人が昔から仲が良いことは知っている。サスケもイタチにべったりで、イタチもサスケには甘かった。イタチも言っては辛いものもあるだろう、やや俯いた。 「確かに辛いですが、別に今生の別れというわけではありませんし。暇を出してもらえれば、また会いに参ります」 その言い方はどちらかといえば二人に向けてのもののようであった。例えサスケに対してであったとしても、二人を安堵させる言葉に相違なかった。ここでようやく二人も微かに微笑んだ。 「…分かった、なら今晩の支度を始める。無論サスケには内密にだ」 フガクの言葉に二人はゆっくりと頷いた。 次→ 「暇を出す」ってクビのことですがここでは「休暇」のことです。 辞書にも書いてあります。 前々から書きたかった時代パロ。あまり何時代とか意識してないです。でも書けたことに満足! 2011/10/8 ←top |